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北方海の守護天使  作者: h.hiro
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第2話「繁殖地殲滅作戦」

「がはは!!!牧瀬会長お久しぶりですな!!!」

「ええお久しぶりですギルド長、お変わりなく。」

翌日、牧瀬商会の会議室に豪快な笑い声が響き渡る、机の上のカップが振動する位に。

というか相変わらずこの人の声は大きい、いやお大き過ぎると恵理香は毎回思うのだった。

さっきから恵理香は耳鳴りしてくらくらしているのだが、姉である会長閣下は平然としている。

「おう!!!守護天使殿もお元気そうでなにより、先日のシーサーペント駆除ご苦労様!!!」

「こ、光栄ですギルド長さん・・・あ、あと天使は止めて下さい。」

くらくらしつつ何とか答える恵理香は正直言って逃げ出したい気分だ。

このギルド長声同様身体も大きいうえに性格も豪快だったが、一方で人情味に厚く多くの漁師に慕われている人物らしい。

恵理香も好感の持てる人だと思っているが、毎回会う度にこんな状態で正直閉口させらている。

「それでギルド長さん、相談されたい事とは?」

「おっとそれを忘れるところでしたよ。」

いやその事で来たのに忘れないで欲しい、半分飛びかけた意識で恵理香は思った。

「シーサーペントの繁殖地らしきものですか?」

「ギルド所属の漁船が見たと報告してきましてね。」

操業中の漁船がある岩礁付近に遠くからだが見たらしいとギルド長。

繁殖地・・・そのものずばりシーサーペント達が生み増える場所だ。

連中は適当な岩礁などに卵を産みつけ、生まれた幼生体をそこで育てるのだ。

普通は海域の奥深く、人が滅多に近寄らない所に作られる事が多いのだが。

今回目撃された場所が問題だった、漁場や港に向かう航路に近すぎたからだ。

「今の所実害は無いですが・・・」

この時ばかりはギルド長の声も小さくなる様だった。

「そんな所で多量に繁殖されたら港や航路を通る船舶が襲われる可能性がありますわ。」

多くの人命が危険に晒される事態に万理華が深刻そうな表情を浮かべ指摘する。

「ええ我々漁師ギルドはもちろん商船ギルドもそれを大変憂慮しています。」

ギルド長は姿勢を正すと万理華に頭を下げなら言う。

「ですので漁師ギルドと商船ギルド連名で牧瀬商会さんにその除去を依頼し参った訳です。」

ギルド長から依頼に万理華は暫し考えてから言う。

「非常に危険な依頼ですわ・・・まほろばと言えども。」

そう言って私を見る万理華、どうやら最終的な判断は任せるつもりみたいだと恵理香は気づく。

「そうですね、まず接近するだけでも危険が伴います、向こうも必死になるでしょうし。」

シーサーペント達にとっては大事な場所だけに連中の抵抗は強いだろうと恵理香は考える。

「・・・ですが出来ない話ではないと思います、まほろばならば。」

恵理香の答えにギルド長は安堵の表情を浮かべ、万理華は溜息をつきつつ頷いて見せる。

「貴女がそこまで言うのなら私に異議は無いわ。」

「流石は守護天使殿ですな、頼もしい。」

こうして牧瀬商会によるシーサーペント繁殖地殲滅作戦が行われることが決定したのだった。

「貴方の判断を疑う訳ではないけど・・・本当に大丈夫なのかしら?」

ギルド長が帰った後、万理華がそう聞いてくる。

会長としても姉としても心配なのだろうことは十分理解できたので安心させる為に恵理香は自信を持って答える。

「私はまほろばと乗員の皆を信じてますから・・・問題があるとすれば火力ですね。」

繁殖地のある岩礁は結構大きい、まほろばに搭載されているロケット弾や砲弾を全て打ち込んだとしても破壊出来るかどうか恵理香は確信が持てなかった。

そこまで考えて恵理香は思い出す、そうケイが作り出した例の新型ロケット弾の事を。

「こうなったらケイさんが作った例のロケット弾を使うしかありませんね。」

「例のって・・・まさか使う気なの恵理香ちゃん?」

万理華は表情を引きつかせながら聞いてくる、その非常識な威力については彼女も知っていたからだ。

かなり危険である事は恵理香も理解しているがあのロケット弾であれば全て吹き飛ばせるだろう。

「使用に関しては十分注意します。」

恵理香も出来れば使いたくは無いが、依頼を達成するために必要なら躊躇する気はまったくない。

万理華は恵理香の言葉に肩を竦めて笑掛ける。

「分かったわ、私は貴女を信頼しているから頑張ってね。」

「・・・信頼して頂き感謝します、期待を裏切らない様に微力をつくします。」

恵理香は万理華の言葉に深く頷きながら答えるのだった。

翌日1100。

中央港まほろば専用桟橋。

恵理香が到着すると、乗員達は既に集合し終わっていた。

「お早うございます艦長。」

皆を整列させ待機していた副長が挨拶してくる。

彼女は優秀な副長で恵理香も色々頼りにしているのだが、やたらと他人の恋愛関係に詳しい。

情報収集力が高いのは分かるが、それを何に使っているのかと頭が痛くなる女性だった。

姉同様自分の能力の使い道を絶対間違えていると恵理香には思えてしょうがない。

「お早う副長、全員問題無いですか?」

「問題無しです、総員42名揃ってます。」

整列し恵理香の言葉を待っている乗員達を見渡す。

「お早うございます皆さん。」

「「「「お早うございます艦長。」」」」

乗員達の元気な声に恵理香は自然と笑みが浮かんでしまうが、伝えねばならない事を思うと少々気が重い。

「本日の依頼ですが・・・シーサーペント繁殖地の殲滅になります。」

ざわ・・・乗員達に動揺が広がるのが分かる。

仕方が無いかもしれないと恵理香は思う、繁殖地殲滅は依頼の中でも特にレベルの高いものだったからだ。

ゲームをやってた時も注意しなければキャラや艦を失いかねない依頼だった。

「確かに難度の高い依頼ですが、私は皆さんなら達成出来ると信じています。」

恵理香は一旦言葉を切り乗員達を見渡す。

「各自の責任を果たしてください、そして皆揃って港に帰って来ましょう・・・最高の戦果を達成する為に。」

生きて帰ってまた出撃できる事こそ最高の戦果だと言うのは恵理香の信念であった。

恵理香の言葉に乗員達は不安な表情を笑みに変える。

「では副長、出航準備を。」

「了解です、皆さん始めて下さい。」

「「「はい。」」」

副長の声に乗員達が返答すると、それぞれの配置場所に散って行く。

「それじゃ乗艦しましょうか。」

恵理香は後ろに居た二人に話し掛けるとまほろばに乗り込み艦橋へ向かう。

「燃料と弾薬の積み込み完了、あと例のロケット弾の扱いには十分注意して。」

「食料や水、消耗品の積み込み終了しました。」

必要な物資の積み込みを確認する声が飛び交う艦橋。

「艦長出航準備間も無く完了です。」

恵理香が艦長席に座ると副長が傍らに来て報告する。

「ありがとう副長、完了次第出航します。」

報告を聞いた恵理香は艦橋に一緒に来た2人に話し掛ける。

「お二人とも本当に同行されるのですか?はっきり言って危険ですよ。」

今回の依頼で例のロケット弾を使う事をケイに伝えたら、同行したいと申し入れがあったのだ。

正直言って今回の依頼に乗員以外の者を恵理香は連れては行きたくなかったのだが。

「大丈夫・・・私は恵理香ちゃんを信じているからね。」

無邪気な笑みを浮かべ答えるケイ、信頼してくれるのはありがたいが責任を感じてしまう恵理香。

「ケイを野放しておくと恵理香に迷惑が掛かるから絶対同行させてもらう。」

もう一人の同行者である優香が答える、彼女はケイの義理の娘であり、公私ともにサポートしている女性だ。

「やだな優香ちゃん、私そんなことしないよ。」

「・・・無自覚なのは救いようがないわ。」

娘の筈なのだが、優香はケイに対していつもこんな感じだった。

「いや誉められると恥ずかしいな。」

「・・・はあ。」

もっともケイはまったく気にしてはいない様であったが。

「艦長、物資の積み込み及び出航前点検が完了しました。」

「それでは出発しましょう、機関始動。」

2人のやり取りに苦笑しつつ副長の報告に恵理香は頷くと命じる。

「機関始動します。」

機械音が聞こえ始めると床が微かに振動するのが分かる。

「錨を上げて下さい。」

「錨を上げます。」

錨が引き上げられていく。

「錨を上げました。」

「管理事務所に出航の連絡を。」

港の入港や出港を管理している事務所に連絡を入れて出港の許可をもらう様恵理香が指示する。

「管理事務所より出港の許可が出ました艦長、あと航海の無事を祈るとのことです。」

「感謝を伝えて下さい、では両舷前進微速。」

「両舷前進微速。」

まほろばは桟橋を離れ港の中を進んで行く。

「艦長。」

艦橋の窓から外を見ていた副長がほほ笑みつつ恵理香を呼ぶ。

傍らに来た恵理香は副長が指さした方を見て同じ様にほほ笑む。

「頼むぞ守護天使様!!」

「幸運を・・・」

「バンザイ!バンザイ!バンザイ!」

港内に停泊している漁船の漁師や船の船員達が帽子や手を振り中には万歳三唱してまほろばを見送ってくれていたからだ。

皆ギルドからまほろばが繁殖地殲滅に向かう事を知らされており応援の積りだろうと恵理香。

「流石ですね艦長、守護天使は伊達じゃありませんね。」

副長の多分にからかいの含んだ言葉に恵理香は苦笑する。

「気持ちは嬉しいですね・・・まあ守護天使は出来たらやめて欲しいのですが。」

自分に付けられた北方海の守護天使という称号は恵理香してみれば過分だと常日頃思っているからだが。

副長をはじめ乗員達は恵理香らしいと笑う。

やがてまほろばは外洋に出ると速力を増し目的の海域へ進路を向けるのだった。

「艦長、予定海域に入ります。」

出港してから6時間後、通常の航路を外れて前進していたまほろばは危険な海域に侵入しつつあった。

「総員戦闘配置、見張り及びレーダーは監視を強化して下さい。」

「総員戦闘配置繰り返す総員戦闘配置。」

「見張り及びレーダーの監視を強化します。」

艦内にアラーム音が鳴り響き、乗員達が皆それぞれの配置場所についてゆく。

見張り員は露天艦橋の大型双眼鏡に取り付き、センサー担当はヘッドセットを付け表示装置を見つめる。

「艦載砲及びロケットランチャー発射準備よし。」

艦の前後に装備された艦載砲に砲弾が装填され、ロケットランチャーも発射準備を整えてゆく。

「全艦戦闘配置完了しました艦長。」

副長の報告に恵理香は頷くと前方を指さしながら指示を出す。

「さあいきましょうか。」

前進を続けるまほろば、何か出てくるならそろそろだと恵理香が思っていると・・・

「艦長レーダーに進路前方より本艦に接近してくる目標2を確認。」

やがてセンサー担当が目標を捉えた事を報告してくる。

「艦首ロケットランチャー発射用意。」

『目標データをランチャーに入力完了。』

艦載火器管制室からの報告と共に艦首のロケットランチャーが旋回し仰角を上げる。

『射撃準備よし。』

恵理香はこちらに突進してくるシーサーペントを見つめる。

だが射撃をまだ命じない、出来るだけ引き付け確実に命中させなければこちらがやられてしまうからだ。

「発射開始。」

『発射開始します!』

十分引き付けた事を確認して恵理香が発射を指示すると、ロケット弾がランチャーから次々と打ち出されてゆく。

そして突進してきたシーサーペント2匹に命中し頭部を吹き飛ばす。

「取り舵30。」

「取り舵30。」

まほろばは進路を変更、撃破されどす黒い体液まみれの海面を避けて前進を続ける。

「艦長、左舷後方より新たな目標が2、更にその後ろに3、急速に接近中です。」

進むにつれシーサーペント達がわらわらとまほろばに集まってくる。

「後部艦載砲を2匹の方に、ロケット弾の方を3匹の方に照準し射撃用意。」

『艦載砲及びランチャーに目標データを入力完了、射撃用意完了。』

艦尾にあるランチャー及び艦載砲が後方から接近する目標に照準を合わせる。

「打ち方始め。」

『打ち方始め!』

ロケット弾と砲弾が轟音と共に発射され艦橋のガラスを激しく振動させる。

「艦長、シーサーペント2匹に至近弾、後ろの3匹に全弾命中を確認。」

艦尾方向を監視している見張り員から報告が上がる。

「両舷前進全速、これで少し離れてくれるといいのですが。」

恵理香が見張りからの報告を聞きながら命じる。

「両舷前進全速。」

速力を上げまほろばは岩礁に接近して行く。

「後方のシーサーペント、3匹の方は撃破を確認、2匹の方は1匹は脱落しましたがもう1匹は尚も接近中です。」

センサー担当からの報告が入る、どうやら1匹振り切れない様だと恵理香は溜息を付く。

「左舷に並びます!」

左舷見張り所の見張り担当が叫ぶ。

「前部艦載砲打ち方始め。」

『前部艦載砲打ち方始め。』

前部艦載砲がシーサーペントに向けられ射撃を開始する。

命中弾に身をよじるシーサーペントに更に追い討ちを掛けるが離れ様としない。

「目標離れません、こいつ執念深い。」

思わず見張り担当がそんな愚痴を零すが、誰も突っ込もうとしなかった、皆同じ心境だったからだ。

「構いません、接近だけさせないで下さい。」

一匹だけに構っている暇は無い、接近させなけらば十分だと恵理香は判断する。

「レーダーが目標の岩礁を確認しました。』

「艦長左舷のシーサーペント命中弾多数を受け離れた行きます。」

どうやら目的地の手前まで来た様だった、邪魔者も居なくなったしあとはあの特殊ロケット弾を撃ち込むだけだと恵理香。

「取り舵一杯。」

「取り舵一杯。」

まほろば舵を左舷に切り、前後の煙突の間に設置された特殊ロケット弾装填済みのランチャーを岩礁に向ける。

「舵を戻して下さい、特殊ロケット弾発射用意。」

「舵を戻します。」

『特殊ロケット弾発射用意。』

乗員達の復唱が艦橋内に響く。

『ランチャー、目標左舷岩礁に照準よし!』

「艦長、岩礁からシーサーペント5匹が向かって来ます。」

岩礁を守るためにシーサーペント達も必死なのだろうがそれはこちらも同じだと恵理香は思いつつ特殊ロケット弾の発射を命じる。

「特殊ロケット弾発射して下さい。」

『特殊ロケット弾発射!』

艦中央のランチャーから赤く塗装されたケイ謹製の特殊ロケット弾が打ち出される。

「取り舵一杯!両舷前進全速。」

恵理香はロケット弾を発射したまほろばを離脱させる、ここからは時間との勝負になると緊張しながら。

『命中まで5分!』

「5分前、総員衝撃備えて下さい。」

管制室からのカウントを聞いて恵理香がマイクを取り上げ艦内放送を通じて乗員達に叫ぶ。

もちろん艦橋に居る乗員達にも聞こる様に大声でだ。

艦橋の乗員達は機器などに掴まり、恵理香も艦長席の肘掛を両手で握り締める。

『あと10秒・・・5・3・2・1・着弾今!』

その瞬間今までとは比べものにならない音と艦が転覆してしまうかと思うほどの衝撃が襲い掛かってくる。

「「「きゃあぁぁ!!!」」」

艦橋の乗員達がだけでなく他の乗員達も艦内各所で同じ様に悲鳴を上げる。

恵理香は悲鳴こそ上げなかったが、掛けていた眼鏡を吹き飛ばされてしまった。

やがてまほろばを襲っていた激しい上下左右の振動が収まってゆく。

「艦に損害が無いか確認を急いで下さい。」

「艦内各部損害がないか確認急いで!」

副長が素早く艦内放送で指示する。

「結果を確認します、偵察用ドローンの発進準備を。」

「格納庫へ至急偵察用ドローンの発進準備を開始されたし。」

指示を受け後部煙突後方にある格納庫からドローンが引き出されてくる。

「艦長、ドローンの発進準備完了です。」

「前進半速へ、ドローンを発進させてください。」

「前進半速。」

『ドローン発進します。』

機関担当と航空管制室から復唱が返ってくるとまほろばは速力を落し発着デッキに引き出されたドローンが発進する。

発進したドローンは管制室からのリモートコントロールで岩礁のあったは海域まで来ると搭載カメラを作動させる。

恵理香と乗員達は結果を確認しよう艦橋内に設置されたディスプレーを見て驚くより呆れたという表情を浮かべる。

何しろ繁殖地のあったまほろばの倍はあった岩礁は消滅し、その周りに居たシーサーペント達もどす黒い体液で汚れた海面にバラバラになった状態で浮いていたからだ。

「めちゃくちゃですね・・・相変わらず。」

傍らに来た副長が恵理香に拾った眼鏡を渡しながら呆れた様に言う。

「同感ですね、まほろばはとんでもない物を載せていた様ですね。」

眼鏡を受け取り掛け直しながら恵理香は苦笑しつつ答えた、今更ながらとんでもない物を扱っていたとものだと思って。

「艦長、艦に被害は・・・」

『わはは・・・この地獄の錬金術士の力を見たか愚民ども。』

報告しようとした乗員を遮って艦橋内にスピーカから声が響き渡る。

『ちょ、ケイさん勝手に艦内放送始めないで下さい。』

どうやらケイの様だった、勝手に艦内放送を始めてしまったらしく乗員が止めようとしているらしい。

「・・・ケイさんは確か火器管制室ですよね。」

例の新型ロケット弾の最終調整を行う為優香と共に火器管制室に居る筈だった。

「はいその筈ですが・・・何ですか地獄の錬金術士って?」

副長は呆れた表情で恵理香に問い掛ける。

その問いに恵理香は思い当たる節があったのか苦笑しつつ答える。

「前に自分の今の姿は仮初で、本当の姿はこの世界を滅ぼす為に異界から来た地獄の錬金術士だって言っていたわ。」

時々ケイは自分の発明品の結果を見て興奮するとそう自称していたなと恵理香は思い出していた。

・・・・何となく冗談に聞こえないなと恵理香。

「はあそうなんですか?」

副長はどう反応して良いのか分から様だった、まあ当然だなと恵理香は肩を竦める。

その後もケイは地獄の業火に焼かれるのだとか、この邪眼が光って唸るとか続けていた。

「よろしいのですかこのままにして?」

恵理香は肩を竦めて副長の問いに答える。

「まあ放置しておいても構わないでしょう・・・どうせ直ぐに静かになるでしょうし。」

「・・・・?」

私の答えに副長は不思議そうな表情を浮かべるが、直ぐに恵理香の言った意味を理解する事になる。

『さあ愚民どもよ、私の声を・・・』

『ケイ。』

何時までも続くか分からなかったケイの口上は冷たい声に突然遮られた。

それが優香の声なのは恵理香と乗員達には直ぐに分かった・・・これから起こる事も含めて。

『あの様な発言は止める様散々言った筈なんだけど・・・どうやら分かってはくれなかったみたいね。』

『えっと優ちゃん、その手に持っている物って何かな?いくら私でもそんな物使われたらただじゃすまない・・・』

『問答無用よケイ。』

次の瞬間凄まじい打撃音と女性としてはどうかと思う悲鳴が艦内放送で流れた。

「・・・・成る程よく分かりました艦長。」

十分理解出来ましたという表情を浮かべ副長は頷いて見せる。

「皆さんも気にしなくても構わないです、これで当分静かになるでしょうから。」

恵理香の言葉に周りの乗員達も副長同様に理解しましたという表情を浮かべていた。

まあ自業自得だし、こうなった優香を止められる者はいない、第一そんな彼女に逆らわない方が身の為だと誰もが認識していたからだ。

「それでは帰港しましょう、皆さんお疲れでした。」

「「「「はい艦長。」」」」

恵理香の言葉に副長と乗員達は答えそれぞれの役目に徹するのだった。

なおにケイは港に着くまでまったく意識を取り戻さなかったらしい。


1645

繁殖地殲滅作戦完了。

なお特殊ロケット弾は想定を上回る威力の為今後の使用に関して検討の様あり。

報告者:牧瀬商会所属駆逐艦まほろば艦長牧瀬 恵理香。

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