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北方海の守護天使  作者: h.hiro
27/35

第21話「マーメイド商会」

「マーメイド商会の救助ですか?」

港に近い場所に立つギルド本部のギルド長室で恵理香はそんな要請を打診されていた。

打診して来たのはハンターギルドを率いるレイア。

「ああ、マーメイド商会はとある商会の御曹司の救助に行ったんだが問題が起こったらしく帰還が遅れている。」

ソファーに座った恵理香に対し、自分の執務机に座ったレイアが状況を説明していた。

「ある商会とは?」

「マクレーン商会だよ。」

恵理香の問いにレイアは答える。

マクレーン商会はギルドに所属する商会の中ではそれなりに大きな所だ。

そこの御曹司とは前に商会の関係者が集まったパーティーで会った事があったが恵理香は良い印象が持てなかった。

自商会の影響力を笠に着て傲慢で我儘放題、その割には有名な守護天使の恵理香に対しては卑屈な態度の男だったからだ。

典型的な自分より上の存在には媚び、下には尊大なタイプの人間だったと言う訳だ。

そんな彼相手でマーメイド商会の連中は大いに手を焼いているだろうなと恵理香は思わず同情してしまうのだった。

「それでマーメイド商会と御曹司は何処にいるのですか?」

レイアは恵理香の問いに暫した沈黙した後うんざりした表情を浮かべ答える。

「ベーカー島だよ、例の伝説いや夢物語の有る所だ。」

その答えに恵理香はレイア同様うんざりした表情を浮かべてしまう。

ベーカー島の伝説いや夢物語、それはよくある隠された財宝と言う類のものだ。

今は消えてしまった大商会の長が莫大な遺産を島に密かに隠したと言う伝説だが、そんな話を信じているのは極一部の物好きだけだ。

どうやらマクレーン商会の御曹司殿はそんな物好き人間でもあったらしい恵理香は今更ながら認識した。

大方その遺産でマクレーン商会をより大きくしようとでも思っているのだろうかと恵理香は思う。

業績でなくそんな夢物語で商会を大きくなんて考えているのが次期後継者ではマクレーン商会の未来は絶望的だ。

恵理香は他人事ながらマクレーン商会の行く末が心配になってしまうのだった。

「マクレーン商会長も大変ですね。」

「どうかなこの失態を理由に優秀な弟を次期商会長に出来ると喜んでいるだろうよ。」

次期商会長になれると思い傲慢で我儘になっている長男をこの機会に排除し優秀な次男と挿げ替える積もりなのだとレイア。

まあ賢明な商会長なら当然そうするだろうと恵理香は納得する。

もっとも巻き込まれた御曹司の部下達やマーメイド商会にしてみれば良い迷惑かもしれないがなとレイアは肩を竦めて言う。

「それで遭難してマーメイド商会が救助に行ったと言う訳ですわね。」

取り敢えずマクレーン商会の内情の件を横に置き、恵理香は現状を確認する。

「そうだ、ただそれなら直ぐに帰って来そうなものだが、遅れている。」

レイア長はうんざりした表情を再び浮かべながら言うと恵理香も再びうんざりした表情になる。

それが御曹司の所為だとレイアも恵理香も予想出来てしまったからだ。

大方御曹司が我儘を言い出しマーメイド商会メンバーが対応に苦慮し戻れない状態だと恵理香とレイアは結論付ける。

「成る程状況は理解出来ました・・・そして私が呼ばれた訳も。」

マクレーン商会の御曹司が相手なら守護天使である恵理香が最適と言う訳だ。

相手が超有名人、まあ当人は嬉しくも無いが、そんな相手には卑屈になる御曹司なら言う事をきてくれるだろうとレイアは考えたのだった。

「・・・それで引き受けて貰えるか牧瀬艦長?」

「分かりましたギルド長、お引き受けいたします。」

「助かるよ守護天使。」

立ち上がりギルド長室を出て行く恵理香にレイアは悪戯っぽい笑みを浮かべながらそう言って送り出すのだった。

「何度も言っている様に下賤の君達には分からないのだよ。」

上から目線で喚きたてる御曹司にイリア・マイコードはうんざりさせられていた。

やはり受けるべきではなかったと今更後悔しても遅いの分かっていてもやはりイリアは腹が立つのを抑えられなかった。

ギルドから今回の依頼を聞いた時、イリアとマイの2人は気が進まなかった。

評判の悪い大商会の御曹司の救助などトラブルを背負い込むだけだと予想出来たからだ。

「何言っているんだ2人とも、助けを求めている人がいるなら行かなきゃ。」

そう言って引き受けたロバートをそう言えばこいつはそう奴だったと、溜息を付くしかなかった幼馴染のイリアと友人のマイ。

こうして依頼を受けたロバート達マーメイド商会はベーカー島へ向かった。

道中では大きな問題は無かった、何度かシーサーペントの痕跡を捕らえたが、進路を変更するなどして戦闘は極力避けた。

今回の依頼が救助活動だったからだ、無駄な戦闘を避け様とイリアとマイの意見は一致していた。

なおロバートはその辺は気にしない事は分かっていたのでイリアは意見を求めなかったの言うまでも無い。

そうするうちにベーカー島に到着し、マクレーン商会の御曹司達と接触する事は出来たのだが。

「残念ながらまだ目的は達していない、調査は続ける積もりだ。」

全員の無事を確認しいざ帰投しようとした所で御曹司がそんな事を言い出したのだ。

御曹司が乗って来た船はシーサーペントの襲撃で使い物にならず、イリア達のマーメイド号で帰らなければならないのだが。

連れられて来た御曹司の部下達は直ぐにでも帰りたい様だったが主人がこの有様で困っている状態だ。

一度襲撃されていると言う事は付近にシーサーペントが潜んでいるとみるべきなのだが。

それなのにまだベーカー島で調査を続けると言い出したこの御曹司にイリアとマイは呆れを通り越して怒りを感じてしまった。

下賤の者には分からないと言う御曹司を殴っても連れ帰りたいところだが、彼がマクレーン商会の人間である事がそれを難しくしていた。

今後の補給や依頼などに余計な横槍を入れられる可能性も否定出来ないからだ。

だが帰還予定日を過ぎておりこれ以上遅れてしまえば自分達が契約違反にも問われてしまう可能性もあった。

なおロバートが「その気持ち分かります。」などと言い出したので、イリアは容赦なく殴ったのは余談である。

「さてどうするマイ。」

「・・・最悪銃を突き付けてでも乗せるしかない。」

イリアの問いにマイが何時もに増して無表情に答える。

その様子からマイが怒り心頭になっているなとイリア、まあその点は彼女も同じなのだが。

こうなれば仕方が無いとイリアとマイは顔を見合わせて頷きあうと銃を持って御曹司に近づこうとした。

その時だった、甲高い鳴き声と共に沖合にシーサーペントが出現する。

「ちっ!あっちも我慢出来なくなった様ね。」

シーサーペントは沖合に潜んで獲物が出て来るのを待ち構えていた様だが遂に痺れを切らしたらしいとイリアは溜息を付く。

「このままでは脱出は不可能・・・正直言って状況は絶望的。」

マーメイド号で脱出しようにもシーサーペントが進路を塞いでいる状態をマイが冷静に指摘する。

「な、何とかしろそれがお前達の仕事だろう!!」

御曹司が腰を抜かしてへたり込みながら喚き散らすが、イリアとマイに対処する術は最早無かった。

「こうなれば戦うしかないよイリア、マイ!」

戦う気満々のロバートの台詞にイリアは頭を抱えつつ言い返す。

「どうやって戦えって言うのよロバート。」

マーメイド号を発進させている時間は無い、かと言って持って来たライフルではシーサーペントにかすり傷一つ付けられそうも無かった。

イリアとマイが絶望に囚われる中、シーサーペントがこちらに向かって来ようとした瞬間その頭部が突然吹き飛ばされる。

「「!?」」

その状況にイリアとマイが絶句、ロバートは能天気に喜び、御曹司達は驚愕の余り固まってしまう。

シーサーペントは頭部を失って海上に倒れると、どす黒い体液を撒き散らしながら沈んで行く。

「一体何が起こっているのよ!?」

「助けが来たみたい。」

そう叫ぶイリアにマイは冷静に答えて空を指さす。

「助けって・・・」

その視線の先にあるものを見てイリアも気付く。

どす黒い体液に覆われた海面上空に浮かぶドローンの姿を見て。

「艦長、シーサーペントの撃破を確認。」

戦闘指揮所でセンサー担当の報告を聞いた恵理香は頷く。

「ドローンの映像をこちらに。」

「暫くお待ちください艦長。」

数分後指揮所の共用ディスプレーにどす黒い体液に覆われた海面が映し出される。

「他のシーサーペントの反応は?」

「・・・今のところありません艦長。」

恵理香はセンサー担当の報告に安堵の溜息を付くと次の指示を出す。

「ドローンをベーカー島へ。」

ディスプレイ上で海面が流れ、やがて島が映し出される。

接近するにつれ海岸線に沈み掛けた船と高速クルーザー、そして近くに居る人々が見えて来る。

「どうやら無事の様ですね。」

「そうみたいだね。」

優香とロベリヤが共用ディスプレーを見ながら会話していた。

「間違いないようですね。」

恵理香もそれがマーメイド商会や御曹司達だと確認し次の指示を出す。

「上陸準備・・・先程言った通り後はお願いします。」

「やはり恵理香が行くんだね。」

ロベリヤが恵理香に何か有った場合を心配して聞いてくる。

御曹司がごねる事を見越し恵理香は自分が上陸して迎えに行くと到着前に宣言していたからだ。

「はいこれは誰かに任せる訳にはいきませんから・・・大丈夫ですよ上手くやりますから。」

恵理香は優香とロベリヤそして乗員達の心配を理解しつつ安心させようする。

まあこうなったら恵理香が自分の意思を絶対曲げない事を優香とロベリヤそして乗員達は知っているから皆諦め顔だった。

「・・・無事に帰って来て恵理香。」

「ええ絶対に帰って来ますよ優香。」

優香の声に頷くと皆の顔を見て微笑み恵理香は指揮所を出て行くのだった。

沖合に現れこちらに接近して来るペガサスを見てイリアは呆然としながら呟く。

「牧瀬商会のペガサスがどうして?」

「多分ギルドが派遣して来たと考えるのが妥当。」

冷静にマイは的確に推察してみせる、自分達が何らかのトラブルに見舞われていると考えたギルドが救援を送って来たのだと。

シーサーペントによってどす黒くなった海面を慎重に迂回しつつ島に接近して来たペガサスが停止する。

そしてボートが降ろされると数人の乗員を乗せてイリアたちの居る海岸に近づいて来る。

イリアとマイはそのボートに乗ってこちらに向かって来る守護天使恵理香の姿に気づくと思わず顔を見合わせてしまう。

北方海で知る者の居ない有名人の守護天使が現れたからだ。イリアとマイが驚くのも無理はなかった。

ボートが海岸に到着し艦内作業服を着た恵理香達が上陸するとイリア達に近づいて来る。

そんな恵理香達の姿にロバートと御曹司達がだらしない顔をして見惚れていた。

守護天使の恵理香をはじめペガサスの乗員達は美人ぞろいだったからだ・・・本当に男と言うのはしょうもない生き物である(笑)。

一方イリアとマイはそんな男どもに嫌悪と呆れが混ざった視線を向けていた。

もっとも男性陣からそんな欲望の視線を受けている事に恵理香は気づいていなかった、そのギラギラとした視線の意味に。

まあ一緒に来た女性達はイリアとマイ同様嫌悪と呆れが混ざった視線を向けていたが。

自分以外の女性達の感情に気付く事も無く恵理香は御曹司達とイリアやマイに話し掛ける。

「牧瀬商会所属ペガサス艦長の牧瀬 恵理香です。」

その挨拶にだらしない表情だった男性陣が慌てて表情を引き締める。

「ギルド長の命によりマーメイド号商会の依頼支援にまいりました、時間も余りありませんので現状の説明を願いたいのですが。」

こう言う場合チームリーダーが答えるのが普通だが、マーメイド商会の場合は参謀役のマイが行う。

・・・理由は言うまでも無いだろう。

「マクレーン商会の御曹司一行は全員無事、乗船して来た船は使用不能、こちらとしては直ぐに出発したいが出来ない状態。」

そう淡々と説明しつつマイは御曹司を睨みつける。

「理由は要救助者が帰投を拒否した為、説得は未だに出来ていない・・・以上。」

やはりそうだったかと恵理香は羞恥心の代わりに沸き上がって来た怒りで御曹司を見る。

「う、うるさい俺にはやらなきゃならない事が・・・」

恵理香の視線を浴び腰が引けつつも御曹司が虚勢を張って叫ぶ。

「やらなかきゃならない事・・・一体何があると言いたいのですか?」

そんな虚勢を恵理香はまったく相手にする事も無く冷たい声で遮る。

「いや・・・だから・・・」

それだけで途端に虚勢が消えてしまう御曹司にイリアは呆れた表情を浮かべる。

あれほど自分達に偉そうに言っていたくせに己より格上の相手が出て来たからこの有様なのだから。

「貴方は分かっているのですか?自身の行いが何を巻き起こしているのかを。」

御曹司の後に居る使用人達を見ながら恵理香は問い掛ける。

「貴方も上に立つ者なら己の責任を自覚して下さい・・・」

発せられる恵理香の圧にイリアとマイも圧倒される、初めて見る守護天使の怒りに。

そう恵理香は御曹司の行動に怒り心頭だった、彼女はこういう人間を際も嫌っているからだ。

一方恵理香と共に来た乗員達はさも当然だと別に驚いた様子も無くそれを見ている。

恵理香がそういった輩を本気で嫌っている事を乗員達は知っているからだ、もちろん乗員達だって同じ気持ちだった。

「・・・さあ帰る準備をして下さい、抵抗するなら力づくでも連れて帰りますよ。」

御曹司を見ながら告げる恵理香の圧に御曹司は抵抗など出来ず帰る事を承諾させられたのだった。

帰る為使用人達が荷物をマーメイド号に載せている間、恵理香は海岸に立って水平線を眺めていた。

「えっと、守護天使・・様?」

そんな恵理香に声を掛けてきたのはイリアとマイだった。

「その・・・助かったよ守護天使・・様。」

普段は強気のイリアも相手が守護天使では勝手が違う様で戸惑いつつ礼を言う。

「いえそちらも大変でしたね、ご苦労様でした。」

疲れ切った様子のイリアとマイを見て恵理香が労りの言葉を掛ける。

「まあ確かにね・・さっきは本当にスカッとしたよ、私達の言いたい事言ってくれて。」

「流石は守護天使、感謝したい。」

イリアとマイの感謝の言葉に恵理香は苦笑しつつ答える。

「そうですか?私は必要以上に感情的になったと思ったのですが。」

最近感情的になってしまう事が増えたと恵理香は溜息を付きつつ答える。

さっきの事だって、酷い奴だなと思っても、ゲームの事なのだから本気で怒る必要など無い筈なのに。

最早ゲームをプレイしているとは言えなくなっている気が恵理香はするのだ。

その所為か恵理香は妙な考えに囚われる事が多くなった。

自分がゲーム世界に来て性別を変えられた、それは牧瀬 恵理香という女性の妄想の産物ではないのかと。

いい加減そんな妄想は忘れた方が良いのではないか、恵理香はそう考える事が増えてきた気がするのだ。

何だか自分がこの世界の牧瀬 恵理香にどんどん取り込まれ一つにされて行きそうでとても怖かった。

自分の身体を抱きしめ、恵理香はその恐怖を払おうとする。

こんな思いをするなら受け入れてしまった方が楽なのか、自分の身体を抱きしめ、恵理香はその恐怖を払おうとする。

「ちょ、ちょって大丈夫なの守護天使?」

「顔が青い、心身に問題が?」

慌てた様子で聞いてくるイリアとマイの声に恵理香は我に返ると首を振ってその考えを頭から追い出す。

このままでは艦の指揮に障害が出てしまうと恵理香は何とか気を取りなそうと深呼吸をする。

「まあ守護天使が怒るのも当然だと思うよ。」

「そう守護天使が気にする必要はない。」

その言葉に恵理香はイリアとマイを心配させてしまったと申し訳ない気持ちになる。

「ありがとうございます・・・さあ、そろそろ艦内へ戻りましょう、出発準備も整った様ですし。」

「ええ。」

「・・・うん。」

イリアとマイと共に恵理香は海岸に戻りそれぞれの艦と船に戻っていった。

「艦長、本艦及びマーメイド号出発準備完了です。」

艦長席に座る恵理香に通信担当が報告する。

「では出発します、総員戦闘配置、ソーナー及びレーダーは監視を怠らない様にお願いします。」

「「はい艦長。」」

ペガサスはマーメイド号と共にベーカー島を離れて行く。

このまま何事も無く帰還出来れば良いのだけどと恵理香は思ったが現実はそうもいかなかった。

「艦長!両舷より急速にシーサーペントが接近中、数は6匹です。」

センサー担当の報告にどうやら獲物を待ちきれなかったのはあの1匹だけは無かったらしいと恵理香は溜息を付く。

「数が6匹、しかもバラバラに接近してきている。」

マーメイド号のブリッジで複合ディスプレーを見ていたマイが言う。

「まとめてやられない為に?あいつら何て狡猾なの!」

リベリアも同じ様に複合ディスプレーを見ながら叫ぶ、1匹づつ対応していてはとても捌き切れないのは明白だったからだ。

「艦首及び艦尾VLS発射用意、慌てなくても大丈夫です、ケイさんの性格は兎も角開発したシステムは信頼出来ますから。」

シーサーペント6匹の襲撃に指揮所内に緊張が走ったが、恵理香の冷静な声に乗員達は落ち着きを取り戻す、何気にケイをデスっていたが。

「艦首VLS1番から6番は右舷の、艦尾VLS1番から6番は左舷の目標に照準。」

「全ミサイルに目標データ入力完了。」

火器管制担当の報告にエクセレンは頷き指示を続ける。

「通信担当、マーメイド号にこれより攻撃を開始するので本艦の傍から離れない様伝えて下さい。」

まあ2人ならそんなへまをやるとは思えないが念の為そう連絡させる恵理香。

「はい艦長。」

通信室の担当はマーメイド号を無線で呼び出すと恵理香の言葉を伝える。

「全シーサーペント射程内に入ります。」

恵理香はセンサー担当の報告を聞いても共用ディスプレー上の海域監視システム画面を見詰めたまま発射指示を出さない。

「何で攻撃しないのよ守護天使は?」

イリアは共用ディスプレーを見ながら呟く、危険なまでにシーサーペントがペガサスとマーメイド号に迫って来ているからだ。

「多分守護天使は引き付けて一気にやる積もり。」

マイが冷静な声で答える、そして・・・

「攻撃開始。」

「攻撃開始!」

エクセレンの命令で艦前部と後部のVLSから計12発の対水上ミサイルが打ち上げられると、ペガサス上空で水平飛行に入る。

そして各シーサーペントに向かって2発づづのミサイルが速度を上げて飛翔して行く。

「・3・2・1・着弾!」

そして数分後、ペガサスとマーメイド号を囲むように6の炎と水柱が生まれ、爆音が伝わって来て艦と艇を揺らす。

「これが・・・」

「・・・守護天使。」

攻撃開始から数分で6匹のシーサーペントが複合ディスプレー上から消えさるのを見てイリアとマイは呟く。

「全ての目標の撃破を確認。」

センサー担当の報告が流れると安堵のため息が流れ優香とロベリヤそして乗員達が顔を見合わせて微笑み合う。

「戦闘配置を解除し警戒配置へ、マーメイド号はちゃんとついて来ていますか?」

「はい本艦に追随してます艦長。」

恵理香の問いにセンサー担当が答える。

「それでは帰りましょう港へ。」

中央港へマーメイド号とペガサスは進路を取ると速力を上げてベーカー島を離れて行ったのだった。

そしてペガサスとマーメイド号は途中シーサーペントの襲撃を受ける事無く中央港に無事到着した。

入港後ペガサスは専用埠頭に、マーメイド号は借りている埠頭にそれぞれ接岸した。

その後状況の説明の為に恵理香はイリアとマイと共にギルドに向かった、なおロバートは商会へ1人で戻った。

最初はイリアとマイに同行しようとしたらしいが、2人が来なくてもいいと言って帰らしたのだ。

「「居ても役に立たない。」」

気になって尋ねたらそう帰ってきたので恵理香は苦笑するしかなかった。

なおマクレーン商会の御曹司は連絡を受け迎えに来た商会の人間に彼の使用人と共に引き渡された。

迎えの車に押し込まれるまで文句ばかり言って、恵理香達に感謝の一言も無かったのは言うまでも無い。

そしてギルドに着いた恵理香達は連絡を受けてギルド長室で待っていたレイアに迎えられた。

「無事に帰還ご苦労だった牧瀬艦長、マイコード君。」

「いえご心配をお掛けしましたギルド長。」

イリアはそう答えるとマイと共に頭を下げる。

「自分の責務を果たしただけです。」

何時もの様に答える恵理香。

その後経過説明をマイが行い、その補足をイリアと恵理香が行った後、一同は解放された。

「ご苦労だったな皆、後始末は任せておけ・・・頭が痛いがな。」

レイアの言葉に恵理香とイリアは苦笑を浮かべる、これからあるだろうマクレーン商会を巡る厄介事を想像して。

ギルド長室を出た恵理香はリベリアとマイと共にギルドの受付ロビーに出て来た。

「おっ!イリア、マイようやく帰って来たのか?」

「心配したぜ2人共。」

受付ロビーでイリアとマイは顔見知りのハンター連中に声を掛けられる。

「まあね・・・大分苦労させられたけどね。」

「しんどかった、早く帰って寝たい。」

イリアとマイがそう答えるとどっと笑い声が沸き起こる。

だが恵理香が居る事に気付いた途端にハンター連中は背筋を伸ばして一斉に挨拶をする。

「「「守護天使様、ご苦労様です。」」」

イリアとマイとは違う態度だが2人とも気を悪くした様子は無かった。

ハンター連中にとって守護天使は崇拝の対象でありアイドルだったからだ、まあ恵理香としては恥ずかしくて仕方が無いのだが。

「それじゃね守護天使。」

「さようなら守護天使様」

「ええお二人ともまた機会が有れば。」

挨拶を交わし3人はそれぞれの商会へ戻って行ったのだった。


16:30

マーメイド商会の救援任務を完了。

マクレーン商会御曹司は多少のトラブルはあったものの無事帰還。

報告者:牧瀬商会所属駆逐艦ペガサス艦長牧瀬 恵理香。

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