陰 影 2
部屋に戻り、彩那はアムネシアをガラスのコップに生ける。
——アンティークっぽくてきれいだなぁ
まるで絵画から抜け出てきたような陰影は、記憶や思い出をとどめているようにも感じた。
——時間経過で色が変化していくんだよね
神秘的な雲海に、ふわりと香る儚い色合いが重なる。
——流されすぎじゃない?
よく人になつかない野良猫が、飼い主の愛情を一身に受けて、でろんでろんになる感じってこうなのかも。
ベッドで寝転がりながら、左手首のブレスレットをながめる。
男がブレスレットをプレゼントするのは、逃がさないって意味があるらしい。
仕事柄、アクセサリーにこめられた意味を調べることも多いので、言い伝えやジンクス、ゲン担ぎにもくわしくなってしまった。
でも、まさかね。
そんなに強い感情を持たれるほど、彼との距離は近くない。
シャンデリアの明かりにかざすと、薔薇色の石粒がしたたる。
わふっ、と武蔵と小次郎がのしかかってきた。
「わぁっ」
ご主人様と親しい人間と認知しているのか、それとも同類と思われているのか。
しっぽをふりふりしながらもふもふなボディをこすりつけてくるようになった。
「おまえたちのご主人様って、サービス精神がすごいんだね」
サービス精神、は微妙か。
思いやり?
気づかい?
あ。おもてなし、か。
そっせんして王子様との思い出づくりをやってくれているみたいだ。
実際、そうなのかもしれない。
彼は婚約者バイトの相手を、楽しませようとして気づかってくれているんだろう。
記憶が戻ったらお役御免という、事実契約期間不明な無期限バイトを引き受けてくれた彩那に対して後ろめたさもあるだろう。
わかってる。
それでも、彼がいろいろしてくれることに、ぶっちゃけ、“うれしい”と思っちゃう自分もいるのだ。
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