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偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第2章】
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雲海 4

 何をあやまっているのだろうか。聞き返そうとした瞬間、わずかに体がはなれて、


「それじゃあ僕のお願いを聞いてくれる?」


「え?うん、どうぞ!」


 ——って、ふたつ返事でうなづいてしまったが、何ができるのだろうか・・・・・・。


「目を閉じて」


「へ?」


「お願い聞いてくれるんでしょ?」


 ずるいなぁ。目を閉じることくらいどうということはないが。


 すると彼の両手が左手首に触れた。


 なんだろうとまぶたを開けそうになるが「まだだめだよ」ととがめる口調で言われてぎゅっとつむり直した。


 ひんやりした感触が手首にくっつく。硬い・・・・・・金属?


――まさか手錠?


 そんなわけないと思うが、なぜか頭に浮かんだのがそれだった。


「もういいよ」


 そーっと目を開けると、手首には薔薇色の石が連なるブレスレットがつけられていた。


ローゼンシュタイン(ここ)に来た記念に」


「え、こんなにいろいろもらえないよ」


「土産物店で売っているものだから気にしないで。本当に記念だから」


「で、でも」


 過剰接待が過ぎやしないか。


 あくまで彼の記憶が戻るまでの期間限定バイト。


 王子様と、ただのOLとはすれちがうことすらないのだ。


「よく似合ってる」


 ああ、どうしよう。屈託のない笑顔を向けられて心臓が高鳴って体温が上がっていく。うれしいとしか思えない。


——これは婚約者のバイトで


  暴れる鼓動に必死に言い聞かせても、一度あふれた熱は全身に散っていく。


 貴重な場面に居合わせて興奮しているだけだ。


 きっとミハイルも雰囲気に流されただけだ。


——でも


  せめてこのぬくもりに同じだけの温度を返したくて、その広い背中に腕を回した。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

次回更新も読んでいただけるとうれしいです(⋈◍>◡<◍)。✧♡


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