表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第2章】
84/115

ぐ だ ぐ だ

アイスワインで くだをまくヒロインの回。

「でさぁ~あんのバカ男! “おまえはひとりでも平気だろ“って、ふっるい捨て台詞吐いててさぁ~!」


 数十分前までの躊躇する気持ちはどこへやら。すっかりトラ化した彩那は管を巻く。ワインは香りも良く甘口で、ぐびぐび呑んでしまった。


「つーか、基本つきあってる女がってか、恋愛する女がひとりでヘーキとか、どういう基準よ。見た目キツ目だと強いってか? 浮気してたやつがよくゆーわ! は? 仕事人間は仕事外でも鋼鉄だってか? で、仕事張り切りゃ、上司に手柄は横取りされて……出世先払いだとかいいこと並べちゃってさぁ」


 アルコールが充満する体内でぐらぐらする精神。まだまだ怒りの感情が山盛りだったらしい。ここ数日間の目まぐるしいできごとも頭の中でぐるぐる回る。

 そのせいですっかり忘れてたのに。思い出すのも全部このおいしいワインのせいだと、百パーセントの責任転嫁をして。


「もうとっくに知ってるだろうけど。わたしの行ってた会社ってさぁ~、輸入雑貨の会社で商品開発部にいたんだけど。ショートケーキをイメージした口紅を考えたの。パール系で、苺とホイップクリームがマーブルになったリップの見た目で、あま~い苺ショートの匂いをつけて」


 持ち手にも、こだわった。

 苺の花と葉っぱに、パイピングをイメージしたエンボス。

 とにかく苺のショートケーキと苺っぽさに全力投入した。


 新商品会議で反応は上々だったが、コストが掛かりすぎるとのことで幹部は難色を示した。

『スイーツモチーフなんて目新しくもないからそんなに売れないわよ』上司も鼻で笑う中、だめもとでテスト販売がスタートした。


 上層部の予想に反してショートケーキの口紅は好評だった。

 いよいよ本格的な販売に着手しようとしていた矢先、上司が「元々は自分の発案だった」と言い出したのだ。長年勤めているお局様のため、入社二年目の新人は太刀打できず。


「それでその愚痴こぼせば彼氏とけんか。でぇ、ミーシャと初めて会ったのが、その次の次の日」


 大体のことを話し終え、彩那はグラスのワインを飲み干す。


「ばかみたいでしょ? ほんと……」


 アルコールが回り始めた脳内では、忌々しい記憶がぐるぐる渦巻いた。


「最初は見向きもしなかったくせに。すぐに食ってかかったわよ。でも、『出世の先払いだと思ってさ』だとよ! 仕事中ネットでブランド物漁りして、スマホでゲームばっかしてるアホに言われたかないわよ! てかあんたのうしろだてがなんのメリットあるっての? どこが強いっての。全部強くなきゃいけないのかよ。鍛えれば愛想つかされ、ふられて、仕事頑張れば、横取りされて……。ほんっとに」


 そこまで言うと、不意に彩那は声ををつまらせた。


——なんてみじめなんだろう


 溜まっているものを吐き出せば吐き出すほど、そんなことしか出てこない自分自身が一番屈辱だった。怒りのあとに出てきたのは涙で、テーブルにつっぷしながらひたすら垂れ流した。


 ふわ、と温もりが頭をなでる。


——ああ、またなぐさめてくれているんだ


 ただ黙って、髪をなでてくれるやさしい手に、じりじりした痛みが和らいでいくようだった。

 本当にこれじゃあ、どちらがサポートされる立場だかわからない。


 これも何度目の反省か。


 やさしいからって、ついついミハイルに甘えてしまう。困っているのは彼のほうだというのに。


——でも、ミーシャになでなでされるの気もちいいなぁ


 髪を乾かすときも、大事そうに触れてくれて、今も慈しむように労わってくれる。


 これも婚約者バイトの特権だと都合のいい理由をつけて。


 そのままなでていてほしくて、彩那はじっと動かずにいた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

次回更新も読んでいただけるとうれしいです(⋈◍>◡<◍)。✧♡


評価&ブックマーク登録&いいね をポチっとしていただけると、

とーっても執筆作業の励みになりますのでよろしくお願いします‼


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ