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偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第2章】
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王族であるということ ~伝統と歴史~①

 食事を終え、彩那はソファに座り一心不乱にファイルを読みこんでいた。


 両隣には武蔵と小次郎が寝そべる。なんとなく、ローゼンシュタインの雰囲気はわかってきた気がする。本当になんとなく、だが。


 見慣れない単語の羅列にも、呪文のような名前にも抵抗が薄まったようである。


——インカローズが採れるんだ


 別の項目にも目をやる余裕も出てきた。バラの花みたいな模様の石写真に見入っていると、


「アヤはお酒、ヘーキだよね?」


「? うん」


 ミハイルに声をかけられ、彩那は顔を上げる。彼の手には高級そうなワインの瓶があった。晩酌に誘われ浮かれるも、


——あーでも、あまり飲みたくないかもな


 初めて会ったときの醜態を思いだして躊躇する。しばらくは禁酒したほうが、なんて考えもよぎる。


「これローゼンシュタインの名産品だって。ちょっと飲んでみない?」


 名産品。そう聞くと興味をそそられてしまう。


「うーん……」


 理性と欲がせめぎあう。


「アヤ。ボクのことを知ろうとしてくれているのはうれしいけれど、休息も大切だよ」

「ありがとう」


 テーブルに、二脚のワイングラスが置かれる。せっかく彼が飲もうと言ってくれているのだから、断ったら失礼だ。免罪符を掲げてお誘いに乗ることにした。


「あ、ねぇミーシャ。ここの副首相のところなんだけど」

 ふと思い立ち、彩那はファイルのページを見せる。日常生活の知識に問題はないと聞いているし。

——政治体制のことが日常生活っていうのは微妙な気もするけど


 ローゼンシュタインは立憲君主制だというし、王族も政治に関わっているなら、必要な知識はもちあわせているはずだ。もしかしたら記憶を取り戻す助けにもなるかも、という期待もあった。


「このゼ―ヴェリング侯爵なんだけど。爵位は名誉称号なんだよね? 途中で罷免になったってことは、この称号も返すことになると思うんだけど」


 閣僚に就任すると授与されるなら、終身称号でない限り、役職を退いた時点で返上されるはず。しかし後任の副首相はネーベルガルト侯爵となっている。


第十六代ゼ―ヴェリング侯爵家当主とあることからして、おそらくこの爵位はラウエンシュタイン家が受け継いでいるもの。ある程度の予想はついていたが、あえて質問をしてみる。


 ミハイルは彩那の横に座るとファイルを覗きこんだ。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

次回更新も読んでいただけるとうれしいです(⋈◍>◡<◍)。✧♡


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