王族であるということ ~伝統と歴史~①
食事を終え、彩那はソファに座り一心不乱にファイルを読みこんでいた。
両隣には武蔵と小次郎が寝そべる。なんとなく、ローゼンシュタインの雰囲気はわかってきた気がする。本当になんとなく、だが。
見慣れない単語の羅列にも、呪文のような名前にも抵抗が薄まったようである。
——インカローズが採れるんだ
別の項目にも目をやる余裕も出てきた。バラの花みたいな模様の石写真に見入っていると、
「アヤはお酒、ヘーキだよね?」
「? うん」
ミハイルに声をかけられ、彩那は顔を上げる。彼の手には高級そうなワインの瓶があった。晩酌に誘われ浮かれるも、
——あーでも、あまり飲みたくないかもな
初めて会ったときの醜態を思いだして躊躇する。しばらくは禁酒したほうが、なんて考えもよぎる。
「これローゼンシュタインの名産品だって。ちょっと飲んでみない?」
名産品。そう聞くと興味をそそられてしまう。
「うーん……」
理性と欲がせめぎあう。
「アヤ。ボクのことを知ろうとしてくれているのはうれしいけれど、休息も大切だよ」
「ありがとう」
テーブルに、二脚のワイングラスが置かれる。せっかく彼が飲もうと言ってくれているのだから、断ったら失礼だ。免罪符を掲げてお誘いに乗ることにした。
「あ、ねぇミーシャ。ここの副首相のところなんだけど」
ふと思い立ち、彩那はファイルのページを見せる。日常生活の知識に問題はないと聞いているし。
——政治体制のことが日常生活っていうのは微妙な気もするけど
ローゼンシュタインは立憲君主制だというし、王族も政治に関わっているなら、必要な知識はもちあわせているはずだ。もしかしたら記憶を取り戻す助けにもなるかも、という期待もあった。
「このゼ―ヴェリング侯爵なんだけど。爵位は名誉称号なんだよね? 途中で罷免になったってことは、この称号も返すことになると思うんだけど」
閣僚に就任すると授与されるなら、終身称号でない限り、役職を退いた時点で返上されるはず。しかし後任の副首相はネーベルガルト侯爵となっている。
第十六代ゼ―ヴェリング侯爵家当主とあることからして、おそらくこの爵位はラウエンシュタイン家が受け継いでいるもの。ある程度の予想はついていたが、あえて質問をしてみる。
ミハイルは彩那の横に座るとファイルを覗きこんだ。
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