王族であるということ ~即席マナー教室~
「やっぱり、王子様って大変なんだね」
部屋で夕飯を食べながら、彩那はげっそりと言った。
ミハイル指導の元、はりきってテーブルマナーに臨むも、普段の生活とかけはなれたことは、やりなれない。カトラリーの使い方が独特で、指先がつるかと思った。
「ゆっくり覚えればだいじょうぶだよ」
向かいに座るミハイルがやさしく笑う。教えながら食事という面倒な状況なのに、彼は優雅に料理を口へ運んでいる。
彩那は尊敬と疲れの入り混じったため息をつく。箸休め的にプレッツェルに手を伸ばし、ひと口サイズにちぎった。
——たしか、スープやソースにつけていいはずだよね
「パンはそのままか、ちぎったほうにバターやジャムをつけて食べてね。こっちだとスープやソースにつけるのは、マナー違反になっちゃうから」
「えっ、そーなの?」
パンの食べ方マナーは世界共通だと思っていた。
「フランス式だとOKなんだけど、こっちはドイツ式とオーストリア式が主流だから」
「そ、そーなんだ」
彩那はちぎったプレッツェルを口に入れる。
「国によってマナーも変わるから、ややこしいよね」
ナイフとフォークを交差させて皿に置くと、ミハイルもプレッツェルをちぎった。当然、公務で外国へ行くこともある。
——"王族"ってだけで、もうありえなくない?
言語だけじゃなく、その動きひとつひとつが、すべて世界から注目される。
「やっぱり王子様って大変なんだね」
しみじみとつぶやき、彩那はプレッツェルを噛みしめた。
「でも、ミーシャの動き……所作っていつも、すごくきれいだから見とれちゃうよ」
大変とか同情しながら、ほめるってちょっと矛盾してるかもと思いつつ。
「ありがとう。アヤ」
はにかむミハイルに、どきっとしてしまう。
「う、うん」
胸に現れた熱が広がって、のぼせていくのが自分でもわかった。
ちぎったプレッツェルをひたすら、ちまちま咀嚼する。心臓がうるさくて、残りの料理はただ飲みこんだ感触しかしなかった。
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