書斎会議 2 ~因縁~⑤
(ふりだしに戻ったね)
(お為ごかしもいいところだ)
薄っぺらい目くらましに隠れていたのは実体のない存在の影だった。
まるで、ここまでたどりついてみろ、とでも挑発しているかのようだ。
こんな真似ができる、または、したいと思う動機があるのは、よほどつかまらないことに自信がある立場だ。
(あくまで死亡宣告だからな)
居酒屋付近の防犯カメラ映像を再生させる。
状況証拠しかない。推測の域を出ないが、
(実はヴィルヘルミーナ・ラウエンシュタインは生きていた——ってか)
そう考えるのが妥当だろう。
(だが、もし生きていたとしても、なぜ、あの子を執拗に狙う? 殿下とあの子が知りあったのは、つい先日だろ)
彩那は、主犯につながる重要な手がかりをもっているわけでもない。何か、まだ見落としていることがあるのか。それとも他に、別の意味があるのか。
会話がとぎれ、静まり返った室内に、紫煙が空気を焦がす。(今のところやつらは動きを見せない。だが、これで終わりってことはないだろうよ)思い出したようにゴットフリートがつぶやく。
ミハイルが襲撃されたのを最後に、不気味なほど平穏だった。
(できるだけ早く彼女を帰してあげたかったけれど)
ミハイルは視線を落とす。簡単にけりをつけられるという楽観的な考えはなかったが、思ったよりも厄介だったようだ。
(権力的には、従兄弟様が一番あやしいけどな)
やれやれと、ゴットフリートはソファの背もたれに体を投げ出した。
(先刻も、後片付けをするメイドたちに話しかけていますしね)
ハインリヒが手元の端末で、食堂の監視カメラ映像を確認する。
(きっと、僕の症状をたずねているんだろうね)
ミハイルはあきれたようにつぶやく。いつもならこちらに寄り付きもしないのに。
(そろそろ夕食の時間だね)
柱時計に目をやると、十七時五十分を指していた。
(それじゃ、即席のマナー講座を開催してくるよ)
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