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偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第2章】
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食事でやらかした 1

テーブルマナーって大変だよね~(◎_◎;)

 王子様といっしょのベッドなんて寝つけるだろうか、と心配していた日から一週間が経った。そんなものは同衾一日目から完全なる杞憂に終わり——今朝も彩那はミハイルに起こされていた。


——食事ってこんなに肩がこるものだっけ?


 とんでもなく長いテーブルの前に着席し、彩那は固まっていた。王族としての生活にミハイルを慣らすために、食堂で食事をとることになったのだ。


 朝食は果物やミューズリーなどで軽めに済ませるのが主流らしく、どうにか乗りきれた。だが今の昼食は、いわゆるフルコースというやつだった。

 必要なことであるのは理解できるが、スプーンでスープをすくう手も震えてしまう。しわひとつない清潔そのもののテーブルクロスにシミを作ってしまわないか、はらはらした。テーブルの中央には巨大なブーケみたいな花が飾られている。このような食事のイベントをなんと呼ぶのだったか。


 ”晩さん会”だと、硬直する頭の片隅で思い出す。

 昨日まではミハイルの部屋で、サンドウィッチやパンなど手づかみで食べられるものばかりだったから、この落差は大打撃だった。向かいあって食事をするミハイルはなんの躊躇もなく、堂に入る所作で料理を口に運んでいる。

 うっかり見とれるくらい、きれいな食べ方だった。料理自体の見た目は素朴さを感じるものが多いので、そこはかまえずにすんだが、

——すごい視線感じる

 部屋の壁際には、執事を筆頭にメイドたちがずらりと並んでいる。

 食堂へ移動するときも何人ものスタッフとすれちがった。いったい何十人いるんだ。おまけに彩那のうしろにはハインリヒが立っていた。食べ方がわからなかった場合にすぐ聞けるように、という処置らしいが見張られている気しかしない。ボディガードは他にもふたり立っていて、物々しい雰囲気だ。この堅苦しい空気だけで圧死しそうだし、料理が進むごとに緊張も増していく。


 高校のときのマナー教室を思いだしながら、彩那はナイフとフォークをぎこちなく動かした。前菜、主菜と続いてふくらむ胃とは逆に、神経はすり減っていく。ふと、テーブル上のパンが目に入った。たぶん最初から用意されていたのだろうが、空気に飲まれてまったく気づかなかった。


 これならふつうに食べられそうだ。


 パンを手に取り、彩那はそのままかじった。するとあからさまにメイドたちが口元押さえてクスクスと笑った。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

次回更新も読んでいただけるとうれしいです(⋈◍>◡<◍)。✧♡

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