雨音の響くベッドで 1
意味深なサブタイトルですが、何もありません←
就寝時刻になり、ふたたび押し問答が勃発した。ベッドをゆずろうとするミハイルを必死に止めて、おたがいベッドの両端にぎりぎりまで寄って寝るスタイルに落ちついた。
「おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
部屋の灯りが消される。包むような雨音に沈黙が吸収されてく。
——どうしよう。寝られない
彩那は、一旦は閉じた目を開けた。これまであれだけ爆睡してきたのに。やっぱり彼と同じベッドというこの状況は緊張する。一定の距離を保つベッドで、背中越しの体温が響く。
——ミーシャ、もう寝たかな?
「アヤ」
「ふぇあッ ハイぃい‼」
「ごめんね。イキナリ海外に来ることになって」
それはミハイルのせいではないのに。何も覚えていない彼が気に病むことはない。他に信用できる人間もいないのだから。むしろそんな彼に便乗した自分の厚かましさが申し訳ない。
「わたしこそ、大使館で失礼なこと言いまくっちゃって。ごめんなさい」
税金で生活しているとか、一般人なんてどうでもいいんだろうとか。暴言を吐きまくりだった。
「こんな状況に巻きこまれたら、無理もないよ。王族なんて税金で生活しているイメージしかないよね」
自嘲気味な声に心がちくりと痛い。何も知らないのによく言えたものだ。
会話がとぎれ雨音が鼓膜に充満する。
「ボクには、まだ土台があるから。覚えてなくても生まれ育ったところの空気とか。わからなくても、体に残っていることはあるだろうし」
——それを覚えていないのが一番苦しいのではないだろうか?
もともとビジネスライクな関係だし、そんなに思いやってくれなくてもいいのに。どんな言葉を返せばいいのかわからなくて、彩那は歯噛みする。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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