シャワーとか、歴史とか 1
「アヤ。先にシャワーどうぞ」
「え? いやミーシャが先に」
ミハイルの言葉に彩那はどきっとした。
夕食も食べ終わりお腹もこなれたときだった。気づかいはうれしいが、この部屋の主である彼より先にシャワーを浴びるなんて気が引ける。何度かのゆずりあいの末、どうにかミハイルに先に行ってもらった。脱力感でソファに体を投げ出す。
別に彼は、他意があって言ったのではないとわかってはいるけれど。
午前中のハインリヒとの会話が思い起こされる。
「恋人がおられたんですよね? では、男性と衣食住をともにするのは初めてではないでしょう」
「出会って数日の異性といっしょに寝られるか!」
婚約者である手前、同室ですごさないとあやしまれる。そこまではいいが、いくら大きくてもひとつのベッドでなんか寝られるわけもない。
「初の海外渡航にも関わらず、王室専用機と貴賓室で熟睡されていたあなたなら心配無用でしょう。ああ、人生初の大使館でもよくお休みでしたね」図太いと言いたいのだろう。たしかによく寝ていたけれど。
「わたしになんかあったら、どうしてくれんの? 国家権力で握りつぶすわけ?」
「むしろ何かしでかすのはあなたのほうでしょう」
ハインリヒが言い終わると同時に、彩那は蹴りを入れたが、またもきれいに避けられてしまった。
「その手より先に足が出るくせは直してください」
——王子様を襲う趣味なんかないっての!
ソファに座り、いらだちをもてあましながら彩那は百科事典ファイルを開いた。テレビもあったけど、当然この国の番組しかないし内容がわからなくて消した。スマホも没収されてしまったし、外部との接触も禁じられているからPCもない。
——学校の成績オールA。常時学年三位以内
まぶしいくらいの優等生ぶりにめまいがしそうだ。
「大学院博士課程中……。………………え? ミーシャって大学院生?」
何もかもを手に入れていることを体現した履歴に、ただただ感心するしかない。女王ほどではないが、王族としての務めもそれなりにあるらしい。そのうえ仕事しながら大学院生なんて大変そうだなと思った。
——ミーシャってすごいなぁ
ついさっきまで目の前で話していた相手なのに、全然知らない世界のひとみたいだ。というか、そもそも今回のことがなければ知りあうこともないんだった。知らない世界のひとなのは最初からである。そう思うと妙なあせりが消えて開き直れた。適当にぺらぺらとぺージを飛ばしてめくれば、国の歴史が目に入ってきた。
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