今日から同じ部屋 3
——いやいやいや‼ わたしは単なる婚約者のバイトだから!
高鳴ってしまう鼓動に、必死で言い聞かせる。
「わっ」
いきなり、もふもふっとした固まりがのしかかる。飼い主が遊んでいると思ったのか、武蔵と小次郎もベッドにダイブしてきた。ミハイルとじゃれつく光景は、完全にペット用品のCMだ。
(君たちはもういいから)
何やらハインリヒが指示しているらしき声が聞こえた。そのあとドアが閉まる音もしたから、メイドふたりに退室するよう言ったのだろう。
——このベッドも気もちいいなぁ
体を包みこむような質感に彩那はうとうとと船をこぎ始めた。でも、寝たらまたあの嫌味SPにグチグチ言われる。どうにか、まぶたをもちあげようとしても、重たすぎて無理だった。すると、ふわりと頭をなでられた。
「時差もあるから仕方ないよ」
ささやく声がやたらとやさしい。こんなことをされたらよけいに深い眠りに入ってしまう。ほとんど寝ぼけ状態になっている彩那には、ミハイルの顔を確認する余裕はない。きっと彼は微笑んでいるのだろう。
まぶたが落ちきる直前、彩那のお腹が鳴った。自分の体が発した生理現象に一気に目が覚める。
——よりによって今、鳴る⁉
反射的にお腹を手で押さえた。さっき朝食を食べたばかりなのに。
「何か食べよう」
視線を上に向けると笑っているミハイルがいた。けして馬鹿にした笑いではないし、微笑ましく思っているのだろうけど。彩那は顔から火が出そうだった。
「ハインツさん。お腹が空いたので何かいただけますか? アヤもいっしょに食べよう」
「え? うん」
自分が空腹であるかのような言い方に、あっけにとられていれば、またミハイルが片目をつぶった。
ハインリヒは一瞬眉を上げ、怪訝そうにしていたが「かしこまりました」と内線電話で軽食を手配した。
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