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偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第2章】
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今日から同じ部屋 3

——いやいやいや‼ わたしは単なる婚約者のバイトだから!

 高鳴ってしまう鼓動に、必死で言い聞かせる。

「わっ」

 いきなり、もふもふっとした固まりがのしかかる。飼い主が遊んでいると思ったのか、武蔵と小次郎もベッドにダイブしてきた。ミハイルとじゃれつく光景は、完全にペット用品のCMだ。


(君たちはもういいから)

 何やらハインリヒが指示しているらしき声が聞こえた。そのあとドアが閉まる音もしたから、メイドふたりに退室するよう言ったのだろう。


——このベッドも気もちいいなぁ

 体を包みこむような質感に彩那はうとうとと船をこぎ始めた。でも、寝たらまたあの嫌味SPにグチグチ言われる。どうにか、まぶたをもちあげようとしても、重たすぎて無理だった。すると、ふわりと頭をなでられた。

「時差もあるから仕方ないよ」

 ささやく声がやたらとやさしい。こんなことをされたらよけいに深い眠りに入ってしまう。ほとんど寝ぼけ状態になっている彩那には、ミハイルの顔を確認する余裕はない。きっと彼は微笑んでいるのだろう。

 まぶたが落ちきる直前、彩那のお腹が鳴った。自分の体が発した生理現象に一気に目が覚める。

——よりによって今、鳴る⁉

 反射的にお腹を手で押さえた。さっき朝食を食べたばかりなのに。

「何か食べよう」

 視線を上に向けると笑っているミハイルがいた。けして馬鹿にした笑いではないし、微笑ましく思っているのだろうけど。彩那は顔から火が出そうだった。

「ハインツさん。お腹が空いたので何かいただけますか? アヤもいっしょに食べよう」

「え? うん」

 自分が空腹であるかのような言い方に、あっけにとられていれば、またミハイルが片目をつぶった。

 ハインリヒは一瞬眉を上げ、怪訝そうにしていたが「かしこまりました」と内線電話で軽食を手配した。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

次回更新も読んでいただけるとうれしいです(⋈◍>◡<◍)。✧♡

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