書斎会議 1 ~従兄弟~⑧-2
少しの間、ソファに座っていた彩那だったが、退屈になり部屋の中をあちこち見て回った。
——本当にお城の中にいるんだなぁ
まだちょっと信じられない気分だ。掃除も行き届いていて窓ガラスもぴかぴか。
つー、と窓の格子を指でなぞってもちりひとつ、つかない。
——やっぱりメイドさんが掃除しているのかな
そんなことを考えていると、コンコンとドアがノックされた。
「はーい」
ドアを開けると、メイドがふたり立っていた。
——うわ。本物のメイドさんだ
萌え全開、可愛さ全開のメイドカフェとはちがってかしこまった印象である。いきなり扉を開けたせいか、彼女たちは少々面食らったようだった。
「I will take care of your personal needs during your stay. My name is Nadiya.」
「My name is Nina.」
——……何言ってるのか全然わからない
たぶん、語感からして英語、なんだろう。流暢すぎるせいで、ただ音が耳を通りすぎたことしか認識できない。かろうじてふたりの名前だけはわかった。とりあえず愛想笑いを浮べてみるも、不思議そうに眉をひそめられた。彼女たちは顔を見合わせると、「Please let us know if you need anything else.」きれいにお辞儀をして退室しようとする。
「は? えっ……もう一度言って、ワンスモアっ——」
聞き返そうとするも、ばたんと扉が閉められた。
——何あれ今の。感じ悪い
そーっとドアを開け、彩那は隙間から首をつき出す。廊下を歩きながらメイドたちは、こそこそと話している。内容はわからなくても私語なのはあきらかだった。
(本当にあんな女、王宮内に泊めるの? 信じられないわ)
(英語もまともにしゃべれないのよ。なにあの発音! 無知よね~。あんなのがなんでミハイル様のフィアンセなのかしら)
ふたりのくすくす笑いが耳に刺さる。
とりあえず“ミハイル”って単語と、まったくもって歓迎されていないことだけは、よくわかった。彩那は金色のドアノブをガシッとつかんだ。タイミングを見計らって、重厚な扉を思いっきり叩き閉める。突然背後からとどろいた衝撃音に、ふたりのメイドはビクッと肩をすくめた。
ざまあみろ。景気のいい音が鳴って彩那は少しだけ清々しい気分になった。
その快活音は書斎のミハイルたちも届いていた。
(今のって、あの子だよな?)
ゴットフリートが目を丸くする。
(本当によろしかったのですか?)
(彼女らしいじゃないか)
眉間と口の端に皺を寄せるハインリヒと対照的に、口元に手をやりながらミハイルは笑っていた。
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