もやもや
巨大なクリスマスツリーが飾られたエントランスホールを抜け、静まり返った廊下を移動する。
コツンコツンと乾いた足音が反響してちょっと怖い。
——なんかお化けでも出てきそう
びくびくしながら彩那はあたりを見回した。意外と通路はせまく、大人三人が横一列で歩けるくらいだ。
彫刻のほどこされた柱が並び、壁には植物のような絵が描かれている。
古そうなシャンデリアの明かりが、ぼうっと揺らいだ気がした。悪魔の次は幽霊。このメルヘンチックな雰囲気にあてられたのだろうか。
「松田さん」
「はひぃっ!」
いきなり名前を呼ばれ、彩那は体が跳ねあがった。ハインリヒは前を向いたまま話を続ける。
「先ほど”お会いできで光栄です”と叫ばれていましたが、会話中に口をはさむのは禁止行為です。ご留意ください」
やっぱり、あれはまずかったらしい。
「すみません」
気もちが先走って会話に割りこんでしまったが、黙っていたほうがよかったようだ。
「アヤナさんは、ボクのことを気づかってくれたんですよね」
しょげているとミハイルが弾んだ声でフォローする。
「よけいなお世話になっちゃいましたけど」
「うれしかったですよ。急に泣きつかれて、どうしていいかわからなかったので。ありがとうございます」
やさしく微笑まれて、少し気もちが軽くなる。ミハイルには助けてもらってばかりだ。
——彼のサポート役としてやって来たのに
無力さに情けなくなった。……期間限定のアルバイトなのに、何をそこまで気負っているんだろう。もやもやを引きずりながら、彩那は歩を進めた。
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