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偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第2章】
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もやもや


 巨大なクリスマスツリーが飾られたエントランスホールを抜け、静まり返った廊下を移動する。


 コツンコツンと乾いた足音が反響してちょっと怖い。


——なんかお化けでも出てきそう


 びくびくしながら彩那はあたりを見回した。意外と通路はせまく、大人三人が横一列で歩けるくらいだ。


 彫刻のほどこされた柱が並び、壁には植物のような絵が描かれている。


 古そうなシャンデリアの明かりが、ぼうっと揺らいだ気がした。悪魔の次は幽霊。このメルヘンチックな雰囲気にあてられたのだろうか。


「松田さん」

「はひぃっ!」


 いきなり名前を呼ばれ、彩那は体が跳ねあがった。ハインリヒは前を向いたまま話を続ける。


「先ほど”お会いできで光栄です”と叫ばれていましたが、会話中に口をはさむのは禁止行為です。ご留意ください」


 やっぱり、あれはまずかったらしい。


「すみません」


 気もちが先走って会話に割りこんでしまったが、黙っていたほうがよかったようだ。


「アヤナさんは、ボクのことを気づかってくれたんですよね」


 しょげているとミハイルが弾んだ声でフォローする。


「よけいなお世話になっちゃいましたけど」


「うれしかったですよ。急に泣きつかれて、どうしていいかわからなかったので。ありがとうございます」


 やさしく微笑まれて、少し気もちが軽くなる。ミハイルには助けてもらってばかりだ。


——彼のサポート役としてやって来たのに


 無力さに情けなくなった。……期間限定のアルバイトなのに、何をそこまで気負っているんだろう。もやもやを引きずりながら、彩那は歩を進めた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

次回更新も読んでいただけるとうれしいです(⋈◍>◡<◍)。✧♡


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