お姫様抱っこ ふたたび
姫抱っこふたたび
——脚、痛い
思わず立ちどまってしまった。
「え、うわっ」
いきなり体が宙に浮く。
「無理しないでください」
「ちょっ! みー、ミハイルさっミハイル殿下っ! お、おろしてくださいっ」
ミハイルに抱きかかえられ、彩那はあたふたする。
「ここまで歩いてきて疲れているでしょう? 足も怪我しているんですから」
「いや、本当にだいじょうぶなんでっ!」
遠慮しないで、と至近距離で微笑まれ困惑するしかない。一度彼のお姫様抱っこを経験しているせいでよけいに意識してしまう。
「でしたら私がお運びいたしましょうか」
「けっこうです」
ハインリヒの申し出を速攻で断った。あんなやつに抱っこされるなんて、まっぴらごめんだ。彩那の返事にミハイルはそのまま歩きだした。
「ちょっ、ミハイルさんっ?」
「ハインツさんよりボクのほうがいいんですよね」
有無を言わさぬ笑顔に、彩那は返す言葉がない。ふと視界の端に光をとらえる。
「きれい」
歩くのに必死で気づかなかったが、ふもとの街の明かりがよく見える。まるでイルミネーションをながめている気分になった。
「空気が澄んでいるからきれいに見えますね」
彩那につられて、ミハイルも点在する光の群れに視線をやる。はるか遠くまで一望できる夜景に気持ちが華やぐ。
「あ、見えてきましたよ」
ミハイルの声に彩那は前方へと顔を向けた。
通過点という感じだった三つの門とは異なり、高くそびえる城門塔はガラス窓もついていてそれ自体が家のようだった。そこを通りぬけると、絵本の世界みたいなお城が目の前に広がった。雪化粧した屋根はお菓子の家のようで、ライトアップされた城壁には枯れた蔦が這っている。きっと初夏には緑色の葉に覆われて趣があるだろう。初めて見る本物のお城に息を呑んでいると、
「Misha!」
とつぜん男性の声が響く。玄関先にスーツ姿の男性数人が立っていた。
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