城門への道のり
「急いでください。深夜になってしまいます」
背後からハインリヒの声が飛ぶ。あわてて彩那は、先達をする別のボディガードについて行こうとした。
「アヤナさん。歩けますか? 辛かったらボクが抱えて」
「いや、だいじょうぶですっ!」
ミハイルは気づかってくれているのだろうが、そう何度もお姫様抱っこなんて恥ずかしすぎる。それに一応彼は王子様なのだ。こんな一般庶民な自分が軽々しく抱っこしてもらうのも気が引ける。
「辛かったらすぐに教えてくださいね」
「ありがとうございます」
ぎゅっと手を握ってくるミハイルに、彩那は照れ臭くともうれしく思った。しばらく歩けばそのうち玄関につくだろうし、彼の手をわずらわせることもないはずだ。
だが門をくぐったあとはカーブした上り坂が続き——さらに門が現れた。
中世の名残りと思しき跳ね橋が設置されている。なんかゲームとか洋画で見たことある、なんて思いながら二番目の門を通過し橋をわたった。
その後もらせん状になっている坂道を歩く。まだお城は見えてこない。ゆるやかな傾斜だが、だんだん足がきつくなってきた。膝の傷も動かすたびに皮膚がつれて痛い。坂道をぐるぐる回っているとしか思えない。
「……あの、いつになったらお城につくんですか?」
「あとひとつ門をくぐれば、城門塔が見えてきます」
——まだあるの?
ハインリヒの非情な答えに、彩那は気が遠くなる。どうやら門は全部で三つあるらしい。ふだんなら、たいしたことない距離なのだろうけれど。初めての場所ということもあり、この道が永遠に続くように感じる。どうにか三番目の門にたどりつき、その先のトンネルをくぐり抜けると、ふたたび上り坂を登っていく。
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