ローゼンシュタイン城へ
「たとえ仮初めの婚約者でも、王族の関係者として恥ずかしくないふるまいをなさってください。他の者にあなたとミハイル様の関係が疑われてしまいます」
——それ飛行機の中でも聞いたし
ハインリヒの物言いは引っかかるが、役目柄仕方のないことだとも思った。こういうところで公人と民間人の結婚はむずかしくなるのだろう。
「無用の混乱を避けるため、公にはミハイル様はご静養中と発表しております」
「そんな一度に言われたって覚えられな……」
「機内で爆睡されていたので、十三時間のフライトが無駄になったためです」
畳みかけてくるハインリヒに反論しかけるも、本当のことなので、ぐうの音も出ない……。彩那は窓の外に目をやった。もともとスモークガラス越しだけれど、さすがに暗くてほぼ何も見えない。等間隔に並ぶ街灯と遠くの家々の明かりだけが、はっきり浮かんでいる。
目を凝らすと葉を散らした木々があり——畑だろうか。広々とした平地が確認できた。似たような景色は日本でも見たことがあるのに、やはり外国だからなのか暗闇越しでも雰囲気がちがうように思えた。とにかく視野が広い。でも新緑の季節だったらいざ知らず、今は真冬だ。車内の空気といっしょで歓迎されていないと感じた。
やがて一本道になり周囲の景色が眼下へと落ちていく。林道をのぼっていくと、まだ十一月下旬なのに脇には残雪がある。舗装されてはいるけれど、裸の木が骨みたいだ。
——なんか骸骨に手招きされてるみたい
しかもお城は山のてっぺん。悪魔の城に向かっている気分になって彩那は身震いした。
***
「入口につきました。ここからは徒歩ですので降車してください」
車が止まり、ハインリヒの声に彩那はびくっとなった。とうとうついてしまった。
——本当に悪魔の城だったらどうしよう
正直、車からおりたくない。
「アヤ、ナさん。顔色が悪いですが車酔いしましたか?」
「だいじょうぶです……」
もんもんとしていればドアが開けられ、先に降りたミハイルが手を差しだしてきた。
「お手をどうぞ」
びくびくしながら彩那は彼の手につかまった。あたたかい車内から出たとたん、服の隙間をひゅうっと冷たい風が吹きぬける。帽子にマフラー、コートと完全防備だが、温度差に体が縮みあがった。目の前には大きなレリーフを掲げた門がそびえ立っていた。その堂々とした佇まいは、いかにもお城の入り口という感じだ。悪魔の城ではなさそうだが、即追い返されそうな雰囲気に及び腰になる。
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