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偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第2章】
29/115

王室専用機内にて 4

「この状況で寝ますか?」

 無防備に寝息を立て始めた彩那に、ハインリヒは辟易する。

「いきなりこんな状況に巻きこまれたんだから無理もないよ」

 ミハイルはファイルを閉じ、彩那にブランケットをかけた。

「松田彩那。二十四歳。典型的な日本の家庭に生まれ、家族構成は父母と姉、妹。大学卒業後は輸入雑貨販売会社の商品開発部門に就職。上昇思考が強く仕事には熱心に取り組む。先頃、三年交際していた半同棲状態だった男性と破局。同時期に職場の上司から企画発案の手柄を奪取されたとのことですが」

 身辺調査の内容をハインリヒが空で読みあげる。

「僕と会ったときもかなり酔っぱらっていたしね。それよりも、あんな迫り方をしたら逆効果だろう」

 大使館でのハインリヒの態度にミハイルが苦言を呈す。あの場でミハイルが頭を下げなかったら、彩那を同行させるのは不可能だっただろう。

「あれじゃ単なる脅迫だよ」

「大前提として、一般人と接触したミハイル様に問題があります。今後は犯罪を目撃されても、無視なさってください」

「抱き起こしたときも、ごく一般的な体形で訓練を積んだ様子はなかったよ。それに彼女の部屋だって、ごく一般的な女性の部屋だったんだろう?」

 ミハイルが彩那を背負っていた間、ハインリヒたちは、すでに彼女のアパートを調べていた。

 ハインリヒは、タブレット端末をミハイルに手渡す。画面に表示された彩那の部屋をミハイルは流し見る。

 よくあるタイプのワンルームでキッチンはほとんど使用した形跡がない。

 シンク横の棚にも箸とマグカップ、中皿があるだけだ。

 床には酒類の空き缶、レトルトや冷凍食品、コンビニ弁当の空き容器を入れたゴミ袋が置かれている。

 ソファを境にしたリビングスペースは、狭いながらも洒落たインテリアが並ぶ。リードディフューザーにガラスのローテーブル。寝具は花柄で統一されている。ハンガーラックには、アンサンブルを中心にカジュアル系の服がみっちりと掛けられていた。

 彼女の暮らしぶりを把握したところで、キャビネット脇のゴミ袋が目に入った。中身はモノトーンっぽい衣類のようである。この空間には不釣り合いな——文字通り不用品というべきだろうか。

「彼女が善良な一般市民だったのはあくまで結果論です」

「わかってるよ」

(おーい、そっちはどうだ? 例の彼女、持ち帰れたか?)

 ボディガードのお説教がふたたび始まりそうになった瞬間、ドイツ語の音声が割って入る。ハインリヒのワイヤレスイヤホンからだ。

(誤解を招く物言いをするな。対象者は確保した。王城に到着次第、手はずどおり書斎で落ちあう。準備を整えておけ)

(まじでこの格好しろってのか?)

 ハインリヒの応答に相手は不満そうな声をもらす。

(指定した服装は先刻のメールどおりだ)

(へいへい。殿下はご無事で何より。こっちじゃ閣僚五人が襲われた。実行犯全員ダイヤモンド柄のスカーフを巻いていやがってマスコミは大騒ぎだよ)

(詳細は本国に着いてから聞く)

(おい、まて——)

 ハインリヒは通話を切った。

「ゴットフリートは、おまえの指定した変装がよほど嫌なんだろうね」

 会話内容を察したミハイルが笑う。

「他の者に気づかれないようにするには、医者に扮することが状況的に自然ですから」

 "記憶喪失"なのだから、頻繁に医者と接触しても何ら問題はない。

「今回の一件も、現在本国で勃発している件に関連するようです」

「そのようだね」

 彩那の寝顔を見ながら、ミハイルは神妙な面持ちで頷いた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

次回更新も読んでいただけるとうれしいです(⋈◍>◡<◍)。✧♡


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