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偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第2章】
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いかつい男

いいね、感想、ありがとうございます(*^▽^*)

「松田彩那さんですね」

 たずねてきた割に断定的な口調だ。

「は、はい」

 彩那は恐々と返事をした。そんな様子など意に介さずに男は続ける。

「私はハインリヒ・クンツと申します。あなたにお伝えしたい件がありますので、別室に移動願います」

 流暢な日本語だが、やわらかさのかけらもない。

「は、はい」

 どうやっても返事は「イエス」しか許されない雰囲気だ。見おろしてくるハインリヒの迫力に頷くしかなかった。


***


 ハインリヒのあとについて、彩那は通路を歩く。

——大使館の中ってこんな感じなのか

 自分たち以外、人の気配がない。官公庁っぽい気もするが、そこまでの殺風景さや無機質さはない。充満する格式高さに場ちがいな気がしてきて、のしかかる静寂に息苦しくなった。彩那は肩に力を入れたまま背中を丸める。

 別室と言っていたがどこに連れていくつもりなのだろうか。目の前の背中をチラっと見あげる。肩幅が広くスーツの上からでも筋肉質なのが理解(わか)る。

 背は「()」よりも少し高いようだ。

——あ、あのひとはどうしたんだろう?

 状況を飲みこむのに精いっぱいで、意識の底に追いやられていた彼の存在が思いだされる。

——昨日の夜。大使館まで案内して、変な集団の銃撃があって……

「わ、ぶゅっ」

 記憶を手探りしているとハインリヒの背中に顔がぶつかった。硬い、痛い。にしてもやたら痛いと思って顔をおさえると、額や鼻に絆創膏が貼ってある。

——そういや転んだとき顔面も思いっきり打ったんだった

「前を向いて歩いてください」

「すみません……」

 ハインリヒはふり返ることなく注意する。彩那は縮みあがった。硬く冷たい物言いは命令にしか聞こえない。


 途中でさしかかったエレベーターホールの壁には、風景写真が飾られていた。雲海に浮かぶお城や絵本の中みたいな街並み、クリスマスマーケットが写っている。

 それらを流し見ているうちに、ハインリヒがある部屋の前で足を止めた。

 ひときわ格調高いドアが目を引く。彼がノックすると、中から「どうぞ」という声がした。ハインリヒがドアを開けると、その先には重厚感のある空間が広がっていた。会議室みたいな大きな窓からは陽光が差しこむ。

 大型のソファセットにテーブル、アンティーク調のデスクに革張りの椅子。どうやら執務室のようだ。デスクの横には国旗らしき旗が掲げられている。さっきの部屋も豪華だったが、ここはさらに高級感があった。

 気後れして戸口で二の足を踏んでいれば、ドアノブを持つハインリヒから「早くしろ」と言わんばかりに、にらまれてしまった。

 なんかいちいちえらそうで鼻につく。彩那はしぶしぶ部屋の中に入る。

 室内にはハインリヒみたいな男性が数名に、上品そうなスーツ姿の男性、白衣姿の男性が立っていた。そしてソファに座る彼を見つけた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

次回更新も読んでいただけるとうれしいです(⋈◍>◡<◍)。✧♡


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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったので一気に読んでしまいました。続きが楽しみです。
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