いかつい男
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「松田彩那さんですね」
たずねてきた割に断定的な口調だ。
「は、はい」
彩那は恐々と返事をした。そんな様子など意に介さずに男は続ける。
「私はハインリヒ・クンツと申します。あなたにお伝えしたい件がありますので、別室に移動願います」
流暢な日本語だが、やわらかさのかけらもない。
「は、はい」
どうやっても返事は「イエス」しか許されない雰囲気だ。見おろしてくるハインリヒの迫力に頷くしかなかった。
***
ハインリヒのあとについて、彩那は通路を歩く。
——大使館の中ってこんな感じなのか
自分たち以外、人の気配がない。官公庁っぽい気もするが、そこまでの殺風景さや無機質さはない。充満する格式高さに場ちがいな気がしてきて、のしかかる静寂に息苦しくなった。彩那は肩に力を入れたまま背中を丸める。
別室と言っていたがどこに連れていくつもりなのだろうか。目の前の背中をチラっと見あげる。肩幅が広くスーツの上からでも筋肉質なのが理解る。
背は「彼」よりも少し高いようだ。
——あ、あのひとはどうしたんだろう?
状況を飲みこむのに精いっぱいで、意識の底に追いやられていた彼の存在が思いだされる。
——昨日の夜。大使館まで案内して、変な集団の銃撃があって……
「わ、ぶゅっ」
記憶を手探りしているとハインリヒの背中に顔がぶつかった。硬い、痛い。にしてもやたら痛いと思って顔をおさえると、額や鼻に絆創膏が貼ってある。
——そういや転んだとき顔面も思いっきり打ったんだった
「前を向いて歩いてください」
「すみません……」
ハインリヒはふり返ることなく注意する。彩那は縮みあがった。硬く冷たい物言いは命令にしか聞こえない。
途中でさしかかったエレベーターホールの壁には、風景写真が飾られていた。雲海に浮かぶお城や絵本の中みたいな街並み、クリスマスマーケットが写っている。
それらを流し見ているうちに、ハインリヒがある部屋の前で足を止めた。
ひときわ格調高いドアが目を引く。彼がノックすると、中から「どうぞ」という声がした。ハインリヒがドアを開けると、その先には重厚感のある空間が広がっていた。会議室みたいな大きな窓からは陽光が差しこむ。
大型のソファセットにテーブル、アンティーク調のデスクに革張りの椅子。どうやら執務室のようだ。デスクの横には国旗らしき旗が掲げられている。さっきの部屋も豪華だったが、ここはさらに高級感があった。
気後れして戸口で二の足を踏んでいれば、ドアノブを持つハインリヒから「早くしろ」と言わんばかりに、にらまれてしまった。
なんかいちいちえらそうで鼻につく。彩那はしぶしぶ部屋の中に入る。
室内にはハインリヒみたいな男性が数名に、上品そうなスーツ姿の男性、白衣姿の男性が立っていた。そしてソファに座る彼を見つけた。
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