事故?
ヒロインはまだ登場しません(´◉◞౪◟◉)
生まれは自らの意思で選べないものだが、やはり特権階級という身分モノはとても重苦しく感じることがある。
ガラスに映りこむ、頭からつま先まで黒に統一した姿は、まるで闇夜に舞うカラスだ。そうやって溶けこむ自身にあきらめや憎らしさに似た感情が呑まれていくようだった。
「Dies ist nur in Japan erhältlich.」
言いながらミハイルは塩大福を頬張った。観光できなかったのは残念だったが、トランクには代理購入させた家電製品や食材、駄菓子など。日本でしか入手できない品物がぎゅうぎゅうに積まれている。
「Der dritte.」
残り二個となった塩大福にハインリヒがわずかに眉をひそめる。食べすぎるなと言いたいのだろう。
「Essen Sie auch Heinz?」
「Nein, nicht |erforderlich.」
思ったとおり真面目に返され、ミハイルは、くすくすと笑った。唇についた片栗粉を舌先でなめながら四個目の塩大福を手に取る。
「Hey, Heinz. Mit dem Auto neben dir stimmt etwas nicht.」
運転席のスヴェンが危機感募らせた瞬間、その声は轟音にかき消された。
車内が激しく揺れ、塩大福が宙を舞い、シートからわずかに体が宙に浮く。両隣に座っていたハインリヒとルートヴィヒがシートベルトを外し、ミハイルに覆いかぶさる。どうやら最後尾に車が突っこみ玉突きになったようだ。
「Sind Sie verletzt?」
「Das ist schon in Ordnung. Ich bin nur ein bisschen überrascht, das ist alles.」
ハインリヒの問いかけに笑って返すや否やふたたび衝撃音と振動が襲った。
「Autos auf der nächsten Fahrspur!」
ハインリヒはドアの向こうを鋭くにらむ。
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