お姫様抱っこ~驚愕2
「みっ、みー、みーっ!」
名前を言おうとするも、驚きで頭文字だけしか出てこない。
「っ……」
すると脇を支えていた腕が伸ばされ、口元をふさがれた。一瞬びくっとなったものの、芸能人なのだから当たり前だと思い直す。
交差点を渡り終わったところで男性は彩那をおろし、「あの……」と、とまどいがちに口を開いた。
「すみません。芸能人だからバレたらまずいですよね」
彩那が小声で返すと、彼はきょろきょろとあたりをながめまわした。
「ここって、ドコですか?」
「え? 日本、ジャパンですけど」
「ニホン……」
そうつぶやくと彼はうつむく。どうにも様子がおかしい。
「助けていただいて、本当にありがとうございました」
「イエ、偶然通りかかっただけですから」
とりあえず礼を言うと男性は笑ってバッグを手渡してきた。
——本当にMISHAなのかな?
さっきはあわてていたし見まちがいかもしれない。他人の空似ということもある。びっくりしすぎて酔いがさめた彩那は、はやる気持ちをおさえながら男性を見つめた。
——背、高いなぁ
立って並んでみると、自分の顔の位置に彼の胸元がある。
「あ。ちょっと、じっとしててください」
サングラスがずれている。彩那は爪先立ちになり男性のこめかみに手を伸ばす。テンプルをもちあげると茶色いレンズの下からヘーゼル色の大きな瞳がチラッと見えた——ファッション雑誌と大型ビジョン——そして今、目の前にいる人物が頭の中でぴたりと重なる。
——やっぱりMISHAだ
彩那はそう確信した。しかし、どうしてこんなところに有名モデルがいるのだろうか。疑問を持ったが、すぐに撮影で来日したかプライベートで遊びに来たのかもしれないと思った。
——もしかして今って交渉のチャンス?
有名モデルとこんな至近距離で話せる機会なんて滅多にない。彩那はバッグの中をごそごそ漁って名刺入れを取りだした。
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