書斎会議 3~お説教~
※一部ルビが正常に表記されないので、()内に翻訳を入れています。
「Du verwöhnst sie zu sehr.」
「Ich kann Ihnen nicht sagen, was hier vor sich geht. Wir lassen Sie einfach Ihre Auslandsreise genießen.(こちらの事情を知られるわけにはいかないだろ。海外旅行を楽しんでもらっているだけだよ)」
翌日、書斎で始まったのはハインリヒの小言だった。
昨日、話が打ち切られたことも一因だが、まとまった時間を確保できるのが”医師の診察時”であるからだろう。
「Trotz Ihrer Worte scheinen Sie sich sehr gut zu amüsieren.」
「Das ist ein sehr stacheliges Wort.(ずいぶんと棘のある言い方じゃないか)」
ミハイルは平然と返すも、内心ぎくりとしていた。さすが長年のつきあいなだけある。納得のいかない表情のハインリヒに、ミハイルは畳みかけた。
「Sie hat einen einfachen Charakter, und ich kann es leicht nehmen.」
「Nun, das ist doch gut, oder? Heutzutage hat die Liebe nichts mehr mit Status oder Zeit zu tun.」
煙草をふかし、ゴットフリートがにやつく。医者に扮してはいるが、相も変わらずソファに足を投げ出している。
「Dirk gestand die Tat.」
「ダミアンに次期元首となってほしくて、国民人気を二分するミハイル殺害を企てた」と。
「Seinen Aussagen ist nicht zu trauen.」
ミハイルは眉をひそめた。取り調べでの証言は虚偽であることも多い。
「Andere Haupttäter wurden nicht gefunden. Wenn dies der Fall ist, hat er eine Reihe von Terroranschlägen verübt.(他に主犯とする人間がいない。このまま行けばあいつの企てで、一連のテロが起こされたってことになる)」
ゴットフリートがうなる。事件の解明として最も重要視されるのは物証。ディルクはミハイル襲撃の手引きをし、ボディガードのひとりを撃った。
一連の大臣襲撃犯たちと同様にダイヤ柄のスカーフも所持していた。その彼が自白したとなれば、もう時間の問題だ。
「Wir werden versuchen, die Überweisung zu verlängern, aber vielleicht werden wir das Problem nicht lösen.(なんとか送検を伸ばすが、もしかしたら解決はしないかもしれねぇ)」
秒針の音だけが無情に刻まれる。時計を見やれば長針が十一時四十五分を指していた。
「Es ist fast Mittag, also machen wir Schluss für heute.」
「Gönnen Sie mir hin und wieder ein prächtiges |Schlossessen.」
「Leider gibt es nur genug Essen für zwei.」
「Bitte verlegen Sie das Mittagessen auf 13.00 Uhr.(昼食は十三時に変更をたのむ)」
ふざけるふたりの横でハインリヒは内線で厨房に連絡を入れていた。「Mach dir keine Sorgen」と彼はミハイルに向き直る。
まだお説教は終わっていなかったようだ。
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