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偽りのアムネシア~王子様とOL~  作者: 幸村 侑樹
【第1章】
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アルコールは嫌な記憶をループする

 アパレルショップのショーウインドウに背中を預けてしゃがみこむ。


 脚を投げだして目の前の風景をぼんやりながめた。キラキラふわふわした、いわゆる可愛い女の子たちがばかりが視界に入る。


 自分がああいうタイプだったら、まだ彼とも続いていたのだろうか。不毛な自問自答にため息が出る。


「Beautiful.」


 その発音に顔を向けると——観光客だろうか——外国人の姿もちらほら見受けられた。   


——さっきの女性ひときれいだったなぁ


 ゆるふわでなくても、あれだけの美人だったら話はちがったのかもしれない。


 そういえば、このあたりは大使館も近かった。あの女性も職員だったのかもしれない。などと考えていると、微風になびく髪が頬をつついた。せめて、もう少しやわらかい髪質だったら。


 直毛にツリ目のせいか「キツイ」「何怒ってるの?」と言われがちだった。骨格も直線的でフェミニンな服装は似合わなかった。今着ているのも、着回しの利く便利なアンサンブルとデニムパンツだ。『仕事着でデートとか萎えるわ』といつも彼氏にぼやかれたが、通勤用と私服はわけているし、何を着ようが本人の自由ではないか。


 それもあってか自分は”仕事ばっかり”に見えたようだ。


 その手柄すら上司に横取りされるなんて。企画もデザイナーへの打診と確保も全部自分がやったのに。上司に持ってかれてしまった。


 くやしくて一昨日の夜、彼氏に愚痴ったところ——。



『もっとしおらしくしてればよかったんじゃないの?』

『浮気してるやつに言われたくないんだけど!』

 かちんときて、スマホで撮影した証拠写真をつきつける。写っているのは、彼氏と浮気相手のメッセンジャーアプリでのやりとり。


 一度誤爆したため、彼のスマホをのぞき見れば、いちゃいちゃ甘ったるいセリフの数々に頭が真っ白になった。中にはツーショット写真まであって、彼のとなりに写っていたのは”いわゆる可愛い女の子”だった。

『人のスマホ勝手に見てんじゃねぇよ! 最低だな』

 浮気したくせに、よくもそんなことが言える。

『彼女のほうが可愛いし、オレのことを心配してくれる』

 開き直る彼氏にぶち切れて、気がついたらその顔面を引っ叩いていた。

『マジ可愛くねぇ』

 そう吐き捨てて彼は出ていった。どうせ浮気相手のところに帰ったんだろう。



 一夜明けてスマホにショートメッセージが届いた。しかも退社時刻に。


【おまえとはもう無理。オレの私物は捨てといて】

【言われなくても捨てるわ! そっちにあるわたしのものも捨てろ!】


 即返信してやった。嫌いではなかったにしろ、恋愛ではなかったのかもしれない。もともと友達の延長線で、なんとなく行き来しているうちに私物をおたがいの家に置きっぱなしになって……。


 だいぶ前から『ただいま』『おかえり』のあいさつすらなくなっていたから、もう限界だったのだろう。


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ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


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