65 男女合同ダンスレッスン(3)
どうやらマーリーと二人でいたせいで、すでにペアが決まってしまったのだと思われたようだった。
「…………」
一度、マーリーはアリアナから視線を外すと、「こほん」と小さく声を出す。
それから気を取り直したようにアリアナの前に立つと、改めてタイを直し、髪をかき上げた。
アリアナは、マーリーをじっと見つめる。
仕方なしだろうけれど、ちゃんと体裁は整えてくれるのだわ。
綺麗に真っ直ぐ立つマーリーは、そのまま綺麗に一度お辞儀をした。
「アリアナ。ダンスを」
差し出された手に手を乗せる。
そのキャラクターに違わぬ、堅実なステップ。
本当に、真面目な人なんだ。
自由に踊れるダンスの時間になっても、そのテンポは崩れる事はなかった。
なんだかんだで踊りやすい。
そんな風に、その日のダンスは終わった。
アリアナにとっても、悪くはないダンスだった。
そして、5日目。
男女合同ダンスレッスンの最終日。
アリアナの前に居たのは、アリアナも少し意外に思う人物だった。
もったいぶったお辞儀をして、その人は言う。
「あなたとダンスを踊れる栄光を、私にいただけますか」
華やかなその顔を上げたのは、フリード・スレイマンだ。
「ええ、よろしくお願いします」
こちらも負けじと、華やかに微笑む。
フリードは、ダンスの間中、とてもにこやかだった。
仕草は上品で優美。どちらかといえば色気を纏う優美さだ。
丁寧で正確なステップ。
けれど、リードは大胆。
パートナーを目立つようにサポートするダンスは、やはりアリアナをみんなに注目させた。
にこやかだけれど、言葉を交わすこともなく、なんだか踊らされているようだ。
それにしては、不快な感じはしなかった。
どちらかと言えば、戦いを挑まれているような気持ちで踊る。
アリアナは、その戦いを受けるように、大きくクルクルと回った。
そんな気持ちとは裏腹に、人目を引く綺麗なダンスで、周りの生徒達はため息をもらした。
寄ってきたシシリーは、
「すごかったわねぇ」
と、若干興奮した面持ちで言った。
その後、アイリやクラスの女の子達も寄ってきた。
「アリアナ様!とっても綺麗でした!」
アイリが、アリアナの両手を取る。思った以上に、感動したようだった。
アリアナがクラスの女の子達に取り囲まれているすぐわきを、上級生の女子達が通り過ぎる。
つ、と立ち止まったのは、剣術大会で戦ったエカテリーナだった。
エカテリーナは、アリアナを横目で見ると、
「さすがアリアナ様。素敵なダンスでしたわ」
と一言を置いて、行ってしまった。
その後ろ姿に、アリアナは微笑みを返した。
そんな風に、アリアナの男女合同ダンスレッスンの時間は終わった。
ハーレム候補のエリックとも、マーリーとも、フリードとも踊れた。
なかなか有意義だったんじゃないかしら。
アリアナとしても、こんな風に人前で踊る事は初めてだった。
少し自信がついたかも。
「今日は、みんなで昼食にしましょうか」
「いいわね」
クラスの女の子達が騒めいた。
きゃあきゃあ騒ぎながら、女の子達は陽光で真っ白に輝く大ホールを出て行った。
次回は昼食です!




