61 試験の日(2)
試験3日目、とうとう実技の試験が行われる事になった。
目の前には、小さな四角い小箱がある。
これに魔法陣を描き、何か魔法で動く物を作れという事だ。
これは一見難しそうな課題だけれど、内容自体は事前に告知されている。
事前に魔法陣を探し、作っておき、本番は書き込むだけという試験だった。
魔術棟の実技室。
いつになく、静かにみんなが席に着いている。
「始め」の合図とともに、アリアナも準備してきた魔法陣を見ながら、カリカリとペンで魔法陣を描いていく。
もう魔法陣を描くのも魔術の授業が始まってから4つ目だというのに、どうしても緊張してしまう。
大丈夫。
魔術はライトにしっかり見てもらったんだから。
流石に試験でどういう魔法陣を使うかは見せるわけにはいかなかったけれど。
きっと大丈夫。
カリカリと魔法陣を刻む音ばかりが聞こえる中、ただ、集中して魔法陣を描いた。
カンカンと鐘が鳴るのが終わりの合図だ。
時間以内に魔法陣を書かなければならないことが初めてだったので、時間以内に書ききれなかった者も数人いたようだ。
時間が終わると、全員が息を吐いた。
半数が机に突っ伏する。
アイリも机に突っ伏した者の一人だった。
みんなの白い小箱は、試験が始まった時とは打って変わって、どれもピョコピョコと動いていた。
正確な魔法陣を描けた生徒の中で、アリアナとレイノルドの小箱だけが、しんと静まり返っている。
右に左にとダンスをする白い小箱を持ったシシリーが、アリアナに声をかけた。
「それ、どんな箱なの?」
「これ?開けてみて」
「いいの?」
少しワクワクとした声で、シシリーが小箱を手に取る。
すると、箱の蓋に手をかける間も無く、ビヨン!とピエロの人形が飛び出してきた。
「きゃっ」
シシリーが驚いた声を上げる。
「これ……ビックリ箱?」
「そうよ」
なんでもないようにアリアナが答えた。
この世界にも、ビックリ箱は存在する。
もちろん、小さな子供が遊ぶおもちゃだ。
「も、もう、アリアナったら、時々こんな風に遊ぶんだから」
「ふふっ」
と、アリアナが笑う。
アリアナは、もう一つ、動かずにじっとしていたレイノルドの小箱の方を見た。
レイノルドが失敗するわけがない。
みんなが注目するレイノルドの小箱に、アリアナはシシリーと近づいていった。
レイノルドがふとアリアナの方を見たので、
「これはどういう小箱なの?」
と聞いてみる。
少し前までは、目なんて合わなかったのに。
こんな時、会話できる関係になった事を実感する。
「開けてみて」
レイノルドがアリアナに言ったので、アリアナはおずおずと小箱に手を伸ばした。
私みたいに、ビックリ箱なんかではないだろうし。
そっと、アリアナが小箱に手をかける。
小箱は、あっさりとアリアナの手によって開いた。
ふおん、と小箱から柔らかな風が吹く。
え……?
小箱から溢れ出た風は、金色のキラキラを内包していた。
キラキラとした光が、舞い上がり、舞い降りる。
綺麗だと思う以前に、驚いてしまったアリアナは、目をまんまるにした。
周りから、「おぉー」「さすが」という感嘆の声が上がる。
目をまんまるにしたまま、レイノルドの顔を見る。
アリアナがそんな顔をするとは思わず、レイノルドは「フッ」と吹き出した。
アリアナはちょっとお茶目な面があったりもします。左門もちょっとお茶目だったりします。その辺りは共通点ですね。




