57 アイツ、なんなわけ?(3)
……ライトって、年下かと思っていたけど、そうでもないの?
けど、同じ学年にライトはいない。
もちろん、アカデミーは義務教育ではない。
けど、アカデミーの高等科に入らないという事は、これからの未来を担う貴族達に認識されないという事だ。
結婚相手を決めるこの高等科という期間にアカデミーに居ないと、貴族と結婚できない可能性も多大にある。
アカデミーに入らない事。
それは、大抵の貴族の場合、社会的な死を意味する。
もちろん、命に関わる病気だなんだで、アカデミーに入らない者もいるにはいるが。
ライトは、黒目、黒髪。どちらかというと小柄。
年上だとは思えなかったけど、そうなの?
それとも、年下だけど、勉強がめちゃくちゃ得意とか?
怪しすぎるけど、これもライトを知る為の機会だと思えば、受けないわけにはいかなかった。
「勉強を教えてくれるの?」
「うん」
ライトは、まるでなんでもないように言う。
「じゃあ、教えて貰おうかな」
アリアナがライトに、にこやかに返した。
そして翌日には、ライトは早速アリアナの部屋へ、勉強道具を持ってやって来た。
数学の分厚い教科書に、ライトが持って来た参考書が3冊。
「これ、1冊は見たことがあるわ」
けど、……アレスがレイに紹介された本、だったんじゃなかったかしら。
私、中等科だと思われてる?
そんな変な心配はよそに、ライトは、予定表を見ながら、教科書にチェックを入れていった。
「…………」
的確だわ。
本当に、高等科1年の勉強がわかるのね。
「じゃあ、まず、一つずつ。ポイントを抑えているか見ていこう」
「ええ、先生」
ライトは“先生”と呼ばれて、少しだけ面食らった。
そして、少しおかしそうに、優しく笑った。
結果的に、ライトの勉強の教え方は的確だった。
休憩がてら、お茶を飲みながらアリアナは息をついた。
「数学は少し苦手だったの。なんだか、少しふわふわした理解が明確になったわ」
「それは良かった」
ニコッとした微笑みは、さっきとは違い、貴族らしい整った笑顔だ。
教える側のスイッチが入っているのだろう。
まさか、こんなに勉強できるなんて。
「もしかして、魔術も得意?」
アリアナのふとした問いに、ライトは一瞬固まる。
もしかして、正体が見破られたのでは、と訝しむ。
けど、どちらにしても答えは一つしかない。
「ああ、得意だよ」
ライトには、否定する気はない。
この姿であっても、これ以上、自分を偽る気はない。
もし、それで正体を明かす事になっても。
むしろ、僕に気づいて欲しいとさえ思ってしまう。
紙にサラサラと、魔法陣を描いてみせる。
「…………」
アリアナが、ライトの手元をまじまじと見つめる。
アリアナは魔法陣を描くこと自体、それほど見たことがあるわけではない。
というか、授業で描くのを見ることだけが唯一だ。
サラサラと描ける者も、レイノルドとアルノーしか知らない。
魔術師とはこういうものなのか。
けれど、正直、魔術の実技が不安材料だったアリアナにとって、この上ない味方だ。
そうよ、ね。
レイにお願いするわけにはいかないもの。
国で有数の魔術師を、私の為に拘束するなんてあってはならない事だわ。
それから試験期間が始まる2週間ほど。
アリアナはライトと勉強会をする事になった。
次回まではラブコメ展開でお送りします!




