55 アイツ、なんなわけ?(1)
一人、廊下を歩く。
と、後ろから声が掛けられた。
「アイツ、なんなわけ?」
「……っ!」
振り向くと、レイノルドが、アリアナに話しかけていた。
そっと周りを見渡すけれど、他に話すような人はいないみたい。
人がまばらな明るい廊下。
間違いなく、レイノルドはアリアナに話しかけていた。
声がうわずらないようにしなきゃ……。
「あの人、中等科からああなの」
「あんなに喧嘩腰?」
「そう。リンドベル学園長の息子さんなんだけど、どうやっても試験で私に勝てないから、ちょっとライバル視されちゃってるみたいで」
ふはっ、とレイノルドが声を上げる。
「変なのに目を付けられたね」
「笑い事じゃないわ」
口を尖らせる。
そんな事を言いつつ、心の中でこっそりと、レイノルドと笑い合っている事に驚く。
……こうやって、二人で隣を歩くのも初めてだ。
人がまばらな廊下を歩く。
すぐ横に、レイノルドが居る。
何でこんなにソワソワするの。
ただ、ちょっと二人で話をしているだけなのに。
緊張が、伝わらないようにしなきゃ。
「公爵家っていう立場上、悪意の目を向けられる覚悟はあるけど、まさかこんな事だとはね」
レイノルドが真面目な顔になる。
公爵家以上の家の人間は数が少ない。
こういう事に関しては、レイノルドは数少ない、同じ意識を持てる人だ。
「アリアナ以外のアイツより上の奴は?」
「いないわ」
「なるほど、ね」
そう、中等科に居た3年間。
うちの学年は、常に1位はアリアナ・サウスフィールド、2位がマーリー・リンドベルだった。
「じゃあ、僕もアリアナに負けないように頑張らないとね」
「ふふっ」
とアリアナが笑う。
「公爵家の人間として、精一杯やっていただけよ。エリックやレイがアカデミーに来た以上、お役御免だわ」
高等科の大きな扉を二人でくぐると、少し傾いた太陽の光が、二人を照らした。
眩しくて、目を細める。
ふと、アリアナはレイノルドの方を見た。
レイノルドのプラチナブロンドが、この光の中でどんな風に輝くのか気になった。
チラリと見ただけだったのに、その視線に気付いたのか、レイノルドと目が合った。
「…………」
まるで、今、目が合った事を無かった事にするかのように、目を逸らす。
「レイには簡単には、勝てないと思うわ」
「そんな事、ないでしょ」
そう言うレイノルドは、ちょっとどこか、別の事を考えているみたいだった。
「余裕ぶっちゃって」
アリアナがちょっとムッとした声を出すと、レイノルドがからかうような顔を向けた。
「じゃあ、僕はあっちだから」
魔術棟の方を指差す。
「うん。また、明日」
「うん」
どちらも手を振るでもなく、あっさりとわかれた。
どうしていいかわからなかったのだ。
手を振ったら、返してくれるんだろうか。
けど、それほど仲良くない気もするし。
なんだか、少しだけぼんやりとした意識の中で、アリアナは、振り返ることもなく一人歩いた。
ここからしばらくはラブコメパートです!
仲良くなってくれ!




