52 ダブルデートってことでいいですか(2)
「ここだよ」
とフリードが連れてきてくれたカフェというのは、メインストリートから少し脇に入った小さな店だった。
オシャレだけれど、思ったより派手ではない。
「へぇ……」
少し意外だった。
刺繍屋と同じく、派手な店に連れて行かれるのかと思っていた。
この辺りは令嬢達に話題のカフェもたくさんある。
「いらっしゃいませ」
中に入ると、思ったよりもシンプルな店だった。
綺麗さよりも可愛らしさを押し出したティーカップ。
ショーケースの素朴なケーキ。
パンのコーナーもあり、食事にもぴったりだ。
「あ、スレイマン様」
店長らしき男性が、フリードに声をかける。
「こんにちは」
知り合い……?
アリアナが気にした事に気づいたのか、フリードがこっそりと耳打ちする。
「ここは、うちの母が気にかけてる店なんだ」
なあるほど。
アリアナは、心の中でふむふむ、なんて思う。
このデートのお誘いだと思っていたものは、宣伝だったんだ……。
きっと伯爵夫人本人が出資してるとか、経営してるとか、そういう類の店なのだろう。
まあ、伯爵夫人が目をかけてるくらいだから、あの美味しそうなケーキは実際美味しいのだろうけど。
抜け目がないわね。
4人でテーブルへ座る。
小さなテーブルに座ると、店の立地も相まって、なんだかちょっとした隠れ家にいる気分だ。
こんな風に、“自分だけが知っている店”感を演出するのね。
貴族のご令嬢方は、社交界で疲れる事もある。
こんな風に一人でこっそりとお茶が飲める場所を持っている事は、ちょっとした楽しみになるはずだ。
それでいて、特に令嬢が足を運ぶのにちょうどいい小綺麗さがあり、素敵な店だ。
アリアナとシシリーが並ぶ正面に、フリードとジェイリーが並んだ。
アリアナの目の前に座るフリードが、にっこりと、
「デートみたいだね」
と言い放つ。
それに呼応するように、アリアナは照れたような顔を作り、
「そうですね」
と答えたけれど。
自分の家の店の宣伝に呼んでおいて、“デート”とは……なんてちょっと不服ではある。
それにしても、これだけの伝手がある人、やっぱり魅力的だわ。
仲良くなってはおきたいけど、軽く見るのは危ない気がする。
女の子には慣れているだろうし、猫撫で声を出すだけでは、なんともならないだろう。
出てきたケーキは、素朴ながらも、本当に美味しいケーキだった。
素材がいいのだろう。
どこで買い付けているか聞きたいくらいだわ。
「ん〜〜〜〜…………っ」
隣から、感嘆の声が聞こえる。
ふと見ると、シシリーが、令嬢らしく平静を装おうとして失敗しているのが目に入った。
私の友達は、こういうところが可愛い。
「美味しいわね」
「ええ、本当に!」
反射的に顔を上げたシシリーは、もう嬉しさを隠す事もない。
ジェイリーがそんなシシリーを見て、微笑んだ。
「本当に、美味しいですね」
ジェイリーも素直なものだから、素直に目がキラキラしている。
この二人は純粋でいいわね。
なんだかほっこりしてケーキをいただく。
……またライトとケーキを食べるのもいいなぁなんて思いながら、存外のんびりとした時間を過ごした。
別に照れていないけれど、照れ顔を作れる。
貴族令嬢としての特技でしょうか。




