50 ドレスを着る日(6)
人気の少ない、それでいてその人から見えやすい場所を確保する。
ここからは、少しの賭け。
けど、いつもこういった場では声をかけてくれるのを私は知っているから。
ふっと人影が近づいてくるのに気づき、顔を上げた。
「あ」
にっこりと微笑む。
かかった。
「こんにちは、お招きありがとう」
にっこりと微笑んだのは、フリード・スレイマン。
高等科2年。
常ににこやかだけれど、エリックやロドリアスのような明るさや温かさは薄い。
けれど、笑顔が色っぽいと女の子達には人気だ。
どことなく、何を考えているのかわからない雰囲気。
高い背。
細い腰。
顔も良し。
その上、この人は、スレイマン伯爵夫人の息子さんだ。
スレイマン伯爵夫人は、元王家の人間で、社交界でも注目される人物。
美しい容姿。
最先端のドレス。
取り巻きも沢山!
息子であるフリードも、そういった社交界の情報に近い場所にいるはずだ。
そんなわけで、アリアナはフリードをハーレム候補として認識している。
「フリード様、お会いできて嬉しいです」
アカデミーでは、先輩の事は“様”付けするのが一般的だ。
会える時に好感度を上げておかないとね!
「アリアナ様も、今日はお綺麗ですね」
「あら、ありがとう」
極上の笑顔で、にっこりと笑ってみせる。
この、エリックと同じ血が流れている人に笑顔で勝てるとは思えないけれど。
「フリード様も、」
言いながら、フリードの服に目をやって気づく。
あら?
あの刺繍……。
あの上品でいて豪勢な花柄は、最近女の子達が話題にしている街の刺繍屋のものだわ。
生地も上等だし。
「その服、似合っていますね」
あの刺繍屋は予約を取るにも一苦労だというのに。
本当に、流石オシャレに気をつかうあの夫人の息子なだけあるわね。
「ああ、この刺繍?」
どうやら、アリアナがまじまじと見ていた事に気づかれたらしい。
「ええ、今話題の刺繍屋の物ですね」
すると、フリードの顔がパッと華やいだ。
「やっぱり、君には分かるんだね。そうなんだ。恥ずかしながら、あの店、僕の知り合いが出資していてね」
おお?自慢か?
けど、そんな関わりがある人、やっぱり魅力的だわ。
「君にも紹介しようか?」
紹介……。
それは、出資者として?お客として?
なんて言葉を、危うく口に出しそうになり、呑み込む。
「いいんですか?」
「今度、どうかな。あの辺りの店にも詳しくなってね。美味しいケーキの店もあるんだ」
「あら、いいですね。友人もあのお店、気になっていて。一緒にいいですか?」
「もちろん」
思った以上に、にこやかな笑顔が返ってきた。
ハーレムに入れる以上、この誘いを断る理由なんてない。
すぐにそそくさとシシリーの元に行き、フリードに誘われた話をした。
「あら、面白そうじゃない」
シシリーがこのパーティーで、ニンマリと一番の笑顔を見せる。
「行くでしょ?」
「行くわ」
そんな風に、パーティーは夜遅くまで続いた。
翌日が学校だからと、早いうちに学生達が切り上げた後も、大人達はどうやら遅くまで飲んでいたようだった。
祝勝パーティーエピソードはこれで終わりです。
フリードとエリックは、従兄弟同士なわけですね。




