49 ドレスを着る日(5)
宴は賑やかになってきた。
誰もが、気兼ねなくお喋りし、食事をするようになってきたのだ。
遠くで、ドラーグとアイリが食事にありつく姿も見えた。
あの二人……、ウサギとかハムスターみたいだわ。
「おーじょうさまっ」
耳元でこそっと話しかけられ、アリアナは、
「きゃっ」
と小さく悲鳴をあげた。
見ると、そこにいるのはジェイリーだった。
「ジェイリー?」
いつもの護衛騎士の格好じゃない。
貴族の格好だ。
「見かけないと思ったら、今日はお仕事じゃなかったのね」
「そうなんですよ。いい試合したからって、公爵様が招待客として参加できるように取り計らってくれました」
ほわほわとした花が飛んでいるのが見えそうな笑顔。
これでいて、なかなか顔もいいのだ。
どうしても、家の中にいる親友といった関係で、ハーレムに入れようという気は起こらないけれど。
ジェイリーはジェイリーで、とても強いしかっこよく、さらに笑顔が素敵な人ではある。
「じゃあ、今日は侯爵令息なのね」
「はい、お嬢様」
にっこりと笑顔のままで、ぺこりとお辞儀をする。
流石に毎日公爵家で働いているだけあって、流れるような綺麗なお辞儀だ。
「ダンスパーティーだったら、お嬢様に申し込むんですけどね」
その言葉に、アリアナはふふっと笑う。
急だったからか、今日は立食パーティーで、残念ながら舞踏会ではない。
「ありがとう。じゃあ、今度のダンスパーティーの時にね」
手を振って、ジェイリーを見送る。
アリアナは、ダンスパーティーに出席したことがない。
一般的に、ダンスに出席するのは高等科からということになっている。
授業でダンスレッスンがあるのも高等科からだ。
それだけ、高等科1年生のダンスパーティーは特別で、アカデミーのダンスホールで行われるそのパーティには、王や王妃も呼ばれ、そこで社交界デビューということになる。
もし、私が生粋の悪役令嬢だったら、そこが婚約破棄のステージになるんだろうな。
例えば、エリックと婚約していたりして?
……幼い頃から一緒にいて、その愛情に飽きてしまった王子は、次第に新しい愛に目覚めてしまう!
『アリアナ!もうこれ以上、自分に嘘はつけないんだ。君との婚約は破棄させてもらう!』
ジャジャーン!
なかなかシビれるわね。
とまあ、そんな特別なダンスパーティーまでは、それぞれの家で、それぞれの家でのルールに従って、ダンスや挨拶などのマナーを身につける。
家で淑女教育を受けていたアリアナも例に漏れず、ダンスは家で練習していた。
その時、練習相手をやってくれているのが他でもないジェイリーだ。
もし、本当にジェイリーが本番のダンスでも相手をしてくれるのなら、気は楽でしょうね。
ジェイリーの方に目をやると、アルノーの方に寄って行くところだった。
あの二人は親戚同士で、なんだかんだで仲が良いのだ。
時々二人で話す姿も見かける事がある。
ふと、アリアナは一人の少年に目をやった。
あの人は……。
今日の目的にしていた人だ。
出来るだけ自然に、その人が話しかけられる位置に、アリアナはこっそりと移動した。
ジェイリーくんは気のいいお兄さんな雰囲気の人でしょうか。もちろんイケメンですよ!もちろん!




