44 お兄ちゃんの憂鬱
「あれ?」
ロドリアスは、サナが何処からかワゴンを運ぶのを見かけた。
何処からのワゴンか聞くまでもなかった。
他の誰でもない、アリアナの侍女が運んでいるのだから。
ワゴンの上には、ケーキカバー。
この時間に、わざわざケーキ。
ティーカップはニ客。
今日は本邸に来客はない。
強いて言えば、アレスがレイノルドと勉強してるくらいか。
サナと食べたとも考えられるけれど……。
アリアナがわざわざ用意したというよりは、誰かがアリアナへの贈り物として用意したと考える方が可能性が高い。
騎士学校の誰か?
いや、それよりも。
今日はレイノルドが来ていた事が気にかかる。
弟のように思っているけれど、どうしようもなく許容できない事がある。
昔から!
そう!昔から!
アリアナに向ける視線が、他とは違った。
まるで天使を見つけて幸せだというあの顔!!
自分の家に連れて帰りたいとでも言わんばかりのあの顔!!
アリアナだってそのうち婚約だの結婚だのそりゃあするだろう。
けど、まだ恋人とか早いからな!?
アリアナに想いを寄せる人間は多いものの、アイツが一番危険なんだ!!
あの一件から、少し疎遠になってはいた二人だったけれど、レイノルドがアリアナを視線で追わない日はなかった。
気づけば下の二人と遊び相手になっていたし、うちにしょっちゅう出入りしていた。
ティーカップが二客、ということは二人でお茶でも飲んだのだろうか。
今回、同じクラスになったものだから、また話すようになったんだろうか。
モヤモヤとしながら思わず、アリアナの部屋まで行く。
軽くノックすると、アリアナが、なんでもないような顔を覗かせた。
「…………」
「お兄様。部屋まで来るなんて珍しいですね。何かありました?」
キョトンとする無垢な顔。大事にしなければ。
「ちょっと話しに来ないか?」
コホン、と咳払いをひとつ。
途中、アレスとルナも加わり、ひさしぶりに4人揃っての時間となった。
それぞれがお気に入りのソファを陣取る。
「こうして4人揃うのも久しぶりだね」
「そうね」
アリアナはにこやかだ。
「アリアナは、学校はどうだい?」
「ええ、人数が増えて賑やかよ。教室も広いし、新しい勉強も多くて新鮮だわ」
ロドリアスがニッコリする。
「レイノルドはどうしてる?エリックには会ったけど、レイノルドには会う機会がなくてね」
「そうね」
アリアナは、頭を巡らせながら言う。
「レイはアカデミーでもとっても優秀なの」
ほらね。
アリアナは、相変わらずレイノルドの事、“レイ”って呼ぶんだ。
「僕も早くアカデミーに行きたいな」
「あたしは中等科から入りたいわ」
アレスとルナが騒ぎ出す。
レイノルドの奴、アリアナの蹴りで記憶喪失にでもなればよかったのに。
アリアナがふわっと嬉しそうに笑うのを横目で見た。
「…………」
なんて、な。
「はぁ……」
人知れず、ロドリアスはため息を吐く。
願わくは、アリアナがまだ暫く、その気持ちに気づく事がないよう。
恋人なんて、まだ早いんだからな!!?
子供達がくつろぐ為の部屋には、それぞれのお気に入りのソファ、戸棚にはそれぞれのお気に入りのティーセットが置かれています。




