41 剣術大会(4)
兄とジェイリーも順調に勝ち進んだ。
「アリアナ」
ぷに、と頬に指が当たる。
顔を上げると、エリックが人差し指をアリアナの頬に当てていた。
からかうようなフリをして、実際は優しい顔をしている。
「顔が強ばってる」
「あ……」
言われて気づく。
エリックと試合をすることになって、緊張している。
"王の剣"の娘としては、王子を守るだけの力が欲しいと思っていた。ずっと。
"王の剣"その人でなくとも。
国を支える一員として。
出来れば、守る対象よりも強くありたいと。
「力、入りすぎちゃったみたい」
へへ、と笑うと、エリックも微笑んだ。
「じゃあ今日は、俺が勝つかもしれないな」
そうだ。
たった一度きりのチャンスなわけじゃない。
「アリアナ・サウスフィールド様、エリック・エンファウスト様」
名前が呼ばれ、二人、同時に顔を上げた。
「行こう」
エリックが言い、手のひらを掲げた。
「ええ」
アリアナがそれに応え、ハイタッチした。
歓声が耳に痛い。
もう午後になる太陽の光が眩しい。
感覚を切り裂くような音が、あまりの煩さに聞こえなくなる。
ただ、エリックだけが見えた。
力が抜ける。
おかしな高揚感に包まれる。
しんとした中で、試合が始まる。
エリックの、剣の先を追った。
試合は、あっという間に終わった。
アリアナの一閃と、一瞬の静まりと共に、エリックが膝をつく。
「…………」
見損ねる者もいたほどの、一瞬の出来事。
わっと歓声が上がる。
まるで、息を止めていたかのような自分の呼吸が聞こえ、やっとアリアナは、現実に戻される。
「勝った……の?」
ぼんやりとした意識の中で、エリックの顔が見えた。
エリックが手を差し出してきて初めて、試合が確かに終わったことを確信する。
手を握り、握手をする。
エリックの笑顔につられ、「へへ」と小さく笑った。
アリアナの快進撃はそこまでだった。
4回戦。
2年生を相手にした試合で、あっという間に負けた。
決勝戦は観覧席で見るから、と、控え室を出た。
着替え用の部屋で制服に着替え、シシリーの隣ヘ戻る。
「大丈夫?」
と声をかけられながら、シシリーからタオルを受け取った。
顔を埋める。
タオルの柔らかさをひとしきり堪能した。
最後まで残るのは、無理なのはわかってた。
けど、やっぱり。
ちょっと、悔しいかな。
大丈夫だけど。
大丈夫だけど。
アリアナがタオルに埋まり、動かなくなってしまってから、右側で声がした。
「お疲れ様」
それは、少しだけ呆れたような声だった。
そんな事でなぜそこまで落ち込めるのかと、言っているような声だった。
けれど、優しく慰める声。
「レイ……。ありがとう」
小さく聞こえないくらいの声で、呟く。
右側に微かに触れる熱が、なんだかとてもくすぐったかった。
ここのところ、二人がちゃんと交流できてきましたね!ラブコメっぽくなってきた!




