40 剣術大会(3)
高等科の試合は、中等科の試合とは比べものにならないほど、本格的なものだった。
練習用の剣で、本物よりも軽いとはいえ、鋭さは木剣よりも数段上。
本気で試合に臨む騎士の卵も多く、怪我自体は少ないものの、重い怪我になりがちだ。
集中しなくては……!
トーナメント方式で行われるこの試合は、できるだけ最後まで、同じ家門の者と戦わないように組まれている。
決勝まで残らないとロドリアスやジェイリーには会わない。
出場者は中等科と同様の40名。
シードが8名。
5回勝てば優勝だ。
控え室には無言で剣を振るう人間が大勢いた。
「来たね」
声をかけてきたのはエリックだった。
エリックも王族の一員として、剣術を嗜んでいる。
近くで剣を振っていたロドリアスとジェイリーも寄ってきた。
今日一番の優勝候補はやはりロドリアスだろう。
去年、1年生であったにも関わらず、優勝したのも他ならぬロドリアスだ。
お兄様やジェイリーのように剣は振るえない。
残念ながら、アリアナの剣は、“ちょっとした嗜み”、“護身術”程度のものだ。
でも。
サウスフィールドの家に生まれたからには、そこらの男子生徒よりは強いはずだ。
実際、中等科優勝者には勝っているのだから。
真っ直ぐに、ロドリアスを見た。
「手加減はしません」
アリアナが言うと、ロドリアスは柔らかく微笑んだ。
「ああ」
勝者の笑みだ。
ロドリアスとジェイリーは、シード権を持っている。
先にアリアナとエリックが試合に出ることになった。
エリックは、王族であり、女の子達が注目する一番の出場者なだけあって、試合は最後にくるようになっている。
まず、アリアナが出る番だった。
順調にいけば、3回戦でエリックと。決勝でお兄様かジェイリーと当たる。
「行ってらっしゃい、アリアナ」
ロドリアスに見送られ、試合会場に入る。
暗い通路からパッと明るい陽の下に出る瞬間。
わっと大きな歓声の中心に、アリアナはいた。
「アリアナ様ー!」
女の子達の声援が聞こえる。
大きく手を振って、応えると、「きゃー!」と大きな声が聞こえた。
大勢の声。
手の中に、中等科の頃とは違う、軽いけれど金属で出来た剣が握られている。
目の前には、クラスメイトの少年が立っている。
フワフワと飛んでいきそうな意識の中、試合はあっという間に終わった。
カンッ!と相手が剣を離してしまい、アリアナは勝利を収めた。
フッ……。フフフフフフフフ。
私、なかなかいけるんじゃない?
エリックも勝ち進んだ事を確認する。
あと一つ進んだら、エリックと戦える。
気合いを入れて2回戦に出て行くと、そこに立っていたのは2年生の女生徒だ。
一見華奢だけれど、構えは安定している。
「オーッホッホッホッホ!」
「!?」
まさか剣術の試合で高笑いする人がいるとは……。
一つにまとめた縦ロールが、ブルンブルンと揺れる。
キャラが濃い人だなぁ。
カン!と剣が交わる合間、
「アリアナ様!ですわね!ワタクシ、あなたとは!一度お話ししてみたいと思ってましたの!」
「!?」
相手の女生徒は、剣の腕はよかった。
けれど、試合中にお喋りをしたせいで、剣がブレてしまったらしい。
残念ながら、思ったよりも早く、アリアナは勝利を収めた。
程なくして、エリックも2回戦を勝ち進んだ。
「お疲れ、エリック」
「ああ、次はアリアナとだ」
エリックが、汗の滴る顔で、笑う。
うん、顔がいい。
「ええ、楽しみにしてるわ」
試合のシーンですが、学生の剣技はさっくりいきましょう!




