26 ハーレム計画が動き出してしまった
夜になると、結局、ライトはアリアナの部屋を訪ねた。
「ふふん」
と、アリアナがライトの前で偉そうな顔をした。
ライトはため息を吐く。
三度目の会議にして、ローテーブルを挟んで座るこの形にも、慣れてきていた。
「それでね、ドラーグと二人でランチをしたのよ」
アリアナの、ピシッと伸びた指先。
女神のような蜂蜜色のふんわりとした髪。
深く、吸い込まれそうなスミレ色の瞳。
そこでライトは、新学期前のお茶会を思い出した。
キアラが、僕が好きだと言ったスミレのチーズケーキ。
確かに、以前、スミレのケーキを見てため息を吐いたこともあったけれど。
……あれは、ケーキが好きでため息をついたわけじゃない。この瞳を思い出したからだ。
本当に、本人の前で何てことしてくれるんだか。
ふーっと息を吐いて、アリアナが楽しそうに話すのを眺めた。
聞きたくもない話を。
やっぱり誘われた時について行けば良かったんだ。
二人が戻ってくるまで、気が気じゃなかった。
追いかけるわけにもいかず、思わず、盗聴の陣でも書こうかと思ったくらいだ。
けれどどうしてもライトは、ここまで様子を探りに来てしまうし、仕方なく相槌を打ってしまう。
「調子がいいみたいだね」
アリアナは一言かけただけで、ドヤ顔を作る。
「こんなにあっさり仲良くなれるなんて思ってなかったわ。この調子なら、ハーレム作りもあっさり進むわね」
「でも、男と二人きりで居ると、噂になってしまうんじゃない?」
「ん?」
アリアナは、今初めて気がついた、というようにライトの顔を見た。
「君が公爵令嬢だからみんな大っぴらに口にしないだけで、君が誰とそういう関係なのかはみんな気にするところだろうし」
アリアナは、頬に手を当て、視線を巡らし、短い思考をした。
「構わないわ。最終的にハーレムは作るつもりだし。これは、秘密ではないわ」
「…………!!」
ライトは思う。
他の奴とも二人きりになるつもりなのか……!?
そんなのいつ何が起こるかわからないじゃないか。
なんでそんなハーレム作りたいなんて思ったんだよ。
僕が入っちゃダメ、なのか?
頼んだら、入れてくれたりしないだろうか。
なんて。
ハーレムの一人だったら、それはそれで、満足なんてしないくせに。
この瞳が、別の誰かを映すなんて、我慢ならない。
この子に、誰か別の手が触れるなんて、許せるわけがない。
「ランチの買い方は教えたから、もう毎日一緒にいる必要はないんだけど」
そんな言葉に、少しだけホッとする。
けど、
「時々はドラーグとランチを食べようと思うわ」
そんな言葉にまた絶望する。
正直、羨ましかった。
何もせずともアリアナに探され、寄ってきて、二人でおしゃべりしながら昼食を食べられるんだから。
僕がそうなろうと思ったら、一体どんな道筋を辿ればいいのだろう。
浮いたり沈んだり。
アリアナの存在を想うだけで、この心の中心にずっとあるものを実感してしまう。
君は残酷にも、僕を映さない瞳で、あの頃と同じ顔で、そのキラキラとした笑顔を見せるんだ。
モヤモヤなレイノルドくん。




