23 お昼ご飯は食べました?(1)
その日、こっそり一番後ろの席に座ったアリアナは、教室の中を眺めた。
1年生の中のハーレム候補者は、4人居る。
隣に座るエリック・エンファウスト。この国の王子様。
そして、レイの隣に座っているアルノー・ガーディ。レイノルド・ルーファウスの付き人。
3人目が、学園長の息子。
前の方の席でピシッとした眼鏡を着けて、ピシッと授業を受けている少年。
マーリー・リンドベル。
マーリーは中等科から一緒だ。
4人目が、タイリウ商会の長男。
ドラーグ・タイリウ。
ドラーグは高等科からの新入生。
授業中は、隅っこの方で一人でいる。
平民ゆえに居場所を作るのが難しいんだろうか。
昼食時も、昨日はカフェでも見かけなかった。
アカデミーは、昼食を食べる方法は自由となっている。
アカデミー内には昼食用のカフェが沢山ある。
がっつりと食事にありつく者もいれば、アフタヌーンティーのような形でケーキを食べる者もいる。
アカデミー内に広い原っぱや庭園があり、そこで昼食を取ることもできる。
カフェで買った物を食べる者もいれば、自宅から昼食を持参する者もいる。
その日の昼食時、アリアナはドラーグを探して外を歩き回っていた。
手には、自宅から持ってきたサンドイッチと水筒が入ったバスケット。
きっと、出来るだけ一人になれるところ。
それなら、カフェや人の多い原っぱではないかもしれない。
ゴソゴソと歩き回り、もう諦めようかと思ったところで。
茂みの中に、誰かいる事に気がついた。
……こんな何もない場所に……。ううん、何もない場所だから、か。
何処かの恋人達の逢引きだったら何て言おうかと、セリフなんて考えながら、茂みの中をゴソゴソと入って行く。
『こんな所でお熱いことね!』
なんて?
ブツブツとセリフを練習しながら、そーっと覗くと……。
予想通り、そこにはドラーグが居た。
すっかり横になって眠っているみたいだった。
居た……。
なんだかまるで、迷子の猫を見つけた時のような気分だ。
アリアナは、驚かせないようにそっとそばに座った。
貴族にはなかなかいない短髪。
平民ゆえに、ボタンには家紋はなく、制服の色も基準の黒色だ。
「ん……」
あ、起きる……。
ここで、狼狽えるわけにはいかないわ。
ふ、とドラーグと目が合った。
その瞬間、ビクッ!!と、こちらまでビックリするほどドラーグの肩が跳ね上がる。
「こんな所で奇遇ね。タイリウさん」
にっこりと笑って見せる。余裕の笑み。
「え、と……」
案の定、クラスメイトの顔はまだ覚えていないらしい。
「アリアナよ。アリアナ・サウスフィールド」
「サウスフィールドって……」
ドラーグが慌てて起き上がる。
流石に商会の息子というべきか、公爵家の名は覚えているらしい。
「偶然ね」
「え?あ、ああ……」
こんな場所で“偶然”なんてあり得ないとは思うけれど、公爵令嬢だから返事は肯定のみとでも思っているのだろうか。
それはそれでありがたいので、このまま押し通させてもらう。
「こんな時間にお昼寝なんて。昼食は食べました?」
「あ……」
ドラーグが気まずそうに目を逸らす。
アリアナにはぜひ、全員攻略してハーレムを作っていただきたいですね。




