186 珍しい買い物(5)
アリアナは、エリックに呼ばれ、そっちの方へ行ってしまう。
レイノルドは、気にしない素ぶりで、魔道具を見るのに戻った。
アリアナの隣には、エリックにアルノー。
すぐ近くにジェイリーが立っている。
男に囲まれる姿を見るのは、正直面白いものじゃない。
集中して魔道具を見ようとするけれど、背中の向こうから聞こえる話し声に、なんだか落ち着かなくなる。
「ふふふふっ」
とアリアナの笑い声が聞こえて、胸が、苦しくなった。
どうやら、エリック達と、カエルの形の魔道具を見ながら、面白い話をしているらしい。
エリックが「買おうかな」なんて話して、またアリアナが笑った。
ふと、思う。
あいつらと僕の違いは、そんな所にあるのかもしれない。
エリックやアルノーは、アリアナと楽しく笑い合える関係だ。
面白いものを見せ合って、いつだって楽しそうにしている。
僕と話す時は、アリアナは、あんな風に笑わない。
僕には、あんな風に話す事はできない。
さっきだって、僕は魔道具の解説をしていて、アリアナがふむふむと聞く役だった。
楽しいものを探して、一緒に笑おうなんて、そんな事……一度だってやった事がない。
アリアナだって、ハーレムは居心地がいい場所にしたいと思っているはずだ。
楽しく笑い合える関係の誰かを求めているのかもしれない。
もしそうだとしたら、僕があいつらに勝てる見込みなんて、無くなってしまうんじゃないだろうか。
苦しくなる。
みっともない嫉妬心を抱えて、つい、聞き耳を立ててしまう。
気持ちを抱えきれなくなったレイノルドは、思わず、
「アリアナ」
と呟いた。
聞こえるとは思わない。
あんなに楽しそうに話しているのだから。
笑い声にかき消されて……。
それでも。
やっぱりまだ、諦めるわけにはいかないから。
もう一度アリアナを呼ぶ為、くるり、と振り向くと、
「……!?」
すぐそばに、アリアナが立っていた。
キョトンとした顔をしている。
「また何か、面白いものでも見つけた?」
にっこりとした笑顔で、見つめられる。
…………聞こえてたんだ。
「いや…………」
何か、誤魔化さないと。
「そろそろ、戻らないといけないね。アミュレットを幾つか買っていくから……手伝ってもらっていいかな」
「あのアクセサリーみたいなやつよね。うん、任せて」
二人、連れ立って、アミュレットの棚へ歩く。
アリアナの後ろ姿を視線で追うエリックと、少しニヤついているシシリーとアルノーが目に入った。
アリアナには、僕の声が聞こえたんだ。
そして……僕の元へ来てくれた。
嫌な顔ひとつせず。
そんなちょっとした事が、この上なく嬉しかった。
楽しく話していたからか、少し紅潮した嬉しそうな顔が、とてつもなく可愛い。
アリアナ。
大好きだよ、アリアナ。
そんなわけで、数話にわたってレイノルドくんがもにょもにょする話でした〜。