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170 胸の鼓動を素直に聞けば(2)

 ライトを見送ったアリアナは、愕然としていた。


 どうして……?


 ライトが目の前に立って、一瞬顔が見えなくなった時、不思議な事にレイノルドを思い出した。


 雰囲気?声?におい?

 わからないけど、何かが似ていた。


 魔術師特有の何かなのかしら……。


 レイノルドをまざまざと思い出しただけではなく、ほんの一瞬だけれど、ライトをレイノルドと勘違いしてしまった自分に恥ずかしくなってしまった。


 それが自分の願望だったらどうしよう。


 つまり、ここにいるのがレイノルドだったらいい、と、自分が考えてしまったのだとしたら。


 うわあああああ。


 考えてはいけない事を考えてしまったようで、机に突っ伏して頭を振った。


 ゴンゴンゴンゴン。


 そうよ、こんな時は、心を落ち着かせる為にノートを開くのがいい。


 アリアナは、大切にしまってあるノートを、引き出しから取り出す。

 ハーレム計画のノートは、最初の頃に比べてかなりのページ数になった。

 メンバーの詳細、将来的な展望。

 このメンバーで行いたい事業や、将来建設すべきハーレム宮の間取りまで、詳細に記録してある。


 これを見ると落ち着く……。


 次は何をしようか考えると次第にワクワクして、余計な事を考えなくてもよくなった。


 そんな風に、ハーレムの事を考えながら、アリアナはその日、眠りについた。



 翌日は、片付け日だった。

 大きな荷物を会議棟へ運び込む。

 会議室で今後の予定を話し合えば、今日のところはひとまずおしまいだ。


 文化祭が終わっても、まだ、たくさん服の注文が残ってるのよね。

 活動し続けられるのは、ありがたいけど大変だわ。


 夕方、もう誰もいなくなった会議室で、部屋を見回し、戸締まりの準備をする。

 この部屋とも、まだ暫くは付き合いが続くのね。


 夕陽と共に、部屋を出ると、そこには、窓の外を眺めるレイノルドが居た。


 つい、見とれる。

 ツンとした鼻の横顔とか。

 風になびく前髪とか。


 その光景を、一瞬で必死に心に焼き付け、

「お疲れ様」

 と声をかけた。


「うん。お疲れ様」


 通り過ぎていいのか悩んだところで、レイノルドから声がかけられる。


「アリアナ。君に、渡しておきたい物があるんだ」


 そう言って、レイノルドがポケットから無造作に出してきたのは、緑色の石のはまったペンダントだった。


 ?????


 ペンダント?


 はたして、そんなものを貰う関係だっただろうか。


「…………?」

 きょとーんとした顔を向けると、レイノルドは少しだけ面白そうに笑った。


「これは、認識阻害できるペンダントなんだ」


「認識?」


「これを着けていると、君がアリアナだって知らない人には、アリアナに見えないって事」


「へぇ……」


 魔道具だったんだ……。


「それを、どうして私に?」


「昨日、ジル・ディールに話しかけられて困ってたみたいだったから」


「ああ……。いいの……?ありがとう、嬉しい」

 アリアナがフッと微笑んだ。


 なんだ、そういうプレゼントじゃないんだ。


 けど、こういう方が、貰いやすいというものだ。


 ……心配、してくれたんだ。


 手を出そうとしたところで、レイノルドがペンダントのチェーンを広げてみせた。


「…………」

 不思議に思い、そのままの気持ちを顔に出す。

 レイノルドは、

「チェーンの長さを見たいから、一度つけさせてもらっていいかな」

 と、なんでもないように言った。


「…………」

 むーんとした表情でレイノルドを見たアリアナだったけれど、必要な事ならば、と後ろを向く。


 チャルン、とレイノルドがアリアナにペンダントをつけた。


 ……こんな事、気軽にするなんて、何を考えてるのかしら。


 相手がその気になってしまったら、どうするつもりなのかしら。


 アリアナはちょっと不服な顔のまま、首元に光るペンダントに触れた。

それは、ライトがレイノルドだというヒントだよ!っていう話。

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