166 打ち上げパーティー(4)
結局、打ち上げパーティーでは、ずっとレイノルドと二人で居た。
窓辺でおしゃべりをした。
今までの文化祭のことや、兄達がこれまでの文化祭で何をやっていたかということ、今回の文化祭では何が美味しかったかなんていうことを。
「マーリーにあげたプリンがステージで紹介されたときは、あげたことを後悔したわ」
「マーリーとも、一緒に居たんだね」
「会議室も隣だし、店も隣だったから」
「そう……。じゃあ僕も、そっちに行けばよかったな」
「………………」
深い意味は、ないわよね。
アルノーもエリックも居たから、ってことよね。
けど、レイノルドの視線は、アリアナに余計な事を考えさせた。
話題が尽きれば、二人で会場を見回した。
見回して、少し笑ったり、デザートを取りに行ったりした。
時々、話している間も、レイノルドからの視線を感じるから……。
なんだか居心地が悪くて。
どうしていいかわからなくなった。
なのに楽しくて。
レイノルドと二人で居る時間は、何よりも穏やかで、甘くて。
だけどどこか苦しくて。
……一度味わえば離れられなくなる。
アリアナは気づいてしまった。
用事がないときでもレイノルドの隣に居ていいことに。
……ソワソワしてしまうけど、ここに居ていいんだ。
用事がなくても離れていったりしない事を、今、初めて知った。
レイの顔がいいのも悪いのよ。
ちらりと横を見れば、あの顔で話を聞いてくれる。
揺れる白金の髪の先も。
きれいな鼻の先も。
深い色の緑色の瞳も。
全てが心臓に悪いのだ。
レイったら!存在自体が罪なのよ!
いつの間にあんな優しい会話のしかた覚えたのかしら。
……やっぱり魔術棟で?
魔術師の女の子達がみんなレイを好きになってしまったら、どうするつもりなのかしら。
それとも、もうそういう人が、いる?
「レイは、魔術棟では、うまくやっている?」
「うん。馴染むのはアルノーの方が得意だけどね」
「どんな人が、いるのかしら」
「ん?」
予想外の質問だったのか、レイノルドは少し考える仕草をした。
それはそうだ。
アリアナは、レイノルドの周りにどんな女の子が居るのかと聞いているのだから。
「人が多いからね。けど、みんな魔術以外の事にはあまり気に留めない人が多いから、やりやすいよ」
「へぇ……」
気が合うって、事なのかしら。
ソワソワしているのが、レイノルドにも伝わってしまったらしかった。
「どうしたの?アリアナ。気になる人でも、居る?」
「え、あ……」
まさか、レイノルドの周りに女の子が居るのが気になるなんて図々しい事は言えない。
ホールを一周見渡した後、アリアナは口を開いた。
「実は、そうなの。レイは、……ライトって知っている?」
話を逸らすのにも、ライトを知るのにも、うってつけの質問だと思った。
ライトは魔術師だから、レイノルドも知っているかもしれない。
そんな気軽な質問だったのだけれど。
「知ってる……けど。あいつが気になるの?」
レイノルドは、思った以上に愕然とした顔をした。
やっとイチャイチャしだしたのでは。ただ、告白するのはまだしばらくかかりそうですね。