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165 打ち上げパーティー(3)

 そんなこんなで、パーティーは和やかな雰囲気でフリータイムを迎えた。

 食事や歓談、はたまた交渉の時間だ。

 学生でありながら、有望なビジネスパートナーを捕まえようとみんな必死なのだ。


 人気なのは、やはりステージで紹介された面々。


 フリードも例に漏れず、たくさんの人に囲まれた。


 ……けどまあ、どちらかといえばビジネス狙いというよりも女子人気ね、あれは。


 ビジネス狙いの人間が来ようものなら睨みつけてやろうと思ったけれど、どうやらそんな心配は無いらしい。


「マーリー……プリン美味しかった?」

 小さな声で聞くと、「フッ」と笑顔が返ってきた。

「もちろん。いや、君がくれたんだろ」

「そうだけど〜〜〜〜〜」

 口を尖らせると、隣にいたシャルルが笑った。


 …………!


 その時、アリアナの目に留まったのは、レイノルドだった。


 目が、合う。


 ……女の子に囲まれて……楽しそうじゃないの。


 同じグループの人と一緒に居るなら、仕方がないけど。


 でも……、アルノーだってこっちに居るのに。


「…………」


 どうしていいのかわからないまま、足を踏み出す。

 と、同時にレイノルドもこちらへ足を踏み出した。


「?」


 お互い向かい合ったまま歩くこと10歩。


 ……こっちに向かって来てるように見えるけど、私の方に、来る?

 ううん。

 期待するのはよくない。


 こっちには、アルノーだっているんだから。アルノーに会いに来たのかもしれないじゃない。


 立ち止まり、レイノルドと向かい合う。


「…………」


 私だって、レイに用事があるわけじゃない。


 レイが、女の子に囲まれてるのが嫌だっただけで。


 女の子達から引き離せればいいと思っただけで。


 何か話すことがあるわけじゃないから。


 フイっとすれ違い、窓の方へ行く。


 少し、ひとりで落ち着くのも悪くない。

 壁の花になるべく、くるりと振り向くと、そこにはレイノルドがいた。


 ついてきた……?


 ……私に?

 何か、用事でも、あった?


 表情を立て直すべく、目をそらす。


 でも。


 紺色の魔術師服が目に入る。

 目の前に、レイがいる。

 ……えへへ。


「………………」


「ひとつどう?」


 レイノルドは、目の前にお皿を差し出してくれた。

 お皿の上にはマカロンが4つ。


「あ、ありがとう」


 手に取った小さなマカロンは、サクッとかじると甘いにおいを放つ。


「人気だったみたいだね。『ハローハーモニー』」

「ええ、いいものが出来てよかったわ」


「去年は、何やったの?」

「去年はね、舞台に出たのよ。主人公の妹の役で。歌も歌ったんだから」


「ははっ」とレイノルドが嬉しそうに笑う。


 何よ、その顔。


「僕も聞きたかったな」


「べ、別に上手くはないのよ?」


「だからいいんじゃないか」


 何よ、その楽しそうな顔。


 居たたまれなくなるのよ。


 周りの視線が気になる。

 チラチラと見られている。


 周りからは、どんな風に見えるんだろう。


 ……居たたまれなくなるのよ。


「じゃあ、私、これで……」

 ……もう行くから、って言うところだった。


「なんで?」


「え?」


 なんで???


「何か用事?」

 レイノルドが、アリアナをまっすぐに見る。


「え……あ、ううん」


「じゃあ、ここに居なよ」


 …………?????


 居たたまれないんだけど。

 けど、レイがなんだかすがるような顔をするから。


「うん」


 アリアナはレイノルドと二人、窓辺に並んだ。


 窓からは、ゆるゆると陽の光が入る。

 ざわついたホールの中、ここだけがなんだか静かなような、暖かなような、そんな気がした。

ダメ押しのラブコメ!!

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