164 打ち上げパーティー(2)
文化祭の打ち上げパーティーは、ダンスパーティーではない。
その目的は食事にあり、そして舞台の上で表彰される生徒紹介にある。
特別順位付けされるわけではないけれど、文化祭で何かを成したと認識されることには大きな意味がある。
この貴族の令嬢令息ばかりが通うアカデミーの舞台に立つということは、つまり、未来の貴族達に認識されるということだ。
それは、将来誰に注目するか、はたまた誰を支持するかの指標にもなり得ることだからだ。
スッとホール全体が暗くなると、舞台がライトアップされる。
舞台にいるのは実行委員の二人。どうやら今回の司会者らしい。
今回の文化祭の振り返りと共に、今回の数人の表彰者がステージへ呼ばれる事になる。
「今回は、とても人気のあるスイーツがいくつかありましたね」
「私は、『乳製品研究会』のシュークリームが気に入りましたね!10個も食べちゃいました!」
「10個はすごいですね!」
……ノリが本当に学生の文化祭だわ。
貴族といえど、若者だけならこうなってしまうのかしら。
「そんな中でも、かなりの行列を作った商品がありました」
「『カウカウ伯爵領』のプリンですね!」
……カウカウ伯爵領のプリン?
それって……。
「カウカウ伯爵領のほとんどは農地なのですが、そこで作られる動物達の食べる飼料で有名です」
「カウカウ伯爵領の鶏や牛がそれを食べているから、卵やミルクも美味しいのだと話題ですね」
マーリーにあげたプリンじゃない……!
くるりと後ろを振り向くと、マーリーがニッコリと笑った。
……やっぱり!
食べておけばよかった……!
それにしても、こういう場で領地の飼料がいいと言われるのは、やはり効果ありのようだ。
明日から買い付けが増えるに違いない。
それから、数人の表彰の後。
「さて、次のは女子達の間で話題になったあの商品、ですね」
「ええ!私もお店を覗いてきましたが、すっごく可愛いかったんです!『ハローハーモニー』のワンピース!」
ドキン、と胸が高鳴る。
う、うち……!?
「この作品、デザインした方知ってますか?なんと、あのスレイマン様なんです!」
そして、ステージ場にフリードが呼ばれる。
うわぁぁぁぁ。
まさか、ここでうちの紹介をしてくれるなんて……!
それも、フリード様のデザインが評価されての事だ。
これは、いよいよフリード様を手離すわけにはいかなくなったわね。
うんうん、と一人頷く。
最後に呼ばれたのは、エリックだった。
「今回、文化祭で一番歓声が多かったとの証言が多数ありまして」
そう言われ、ステージ上のエリックは、どこか照れているような顔をした。
「出来る事をやったまでなので」
そう一言言葉にしただけなのに、女子の間からため息が漏れる。
……流石ね。
アリアナは、また一人、うんうんと頷いた。
王子はかなりの人気みたいですね〜。
やっぱり王子だからね〜。