163 打ち上げパーティー(1)
アリアナが大ホールに一歩足を踏み入れるだけで、周りがざわつく。
公爵令嬢のアリアナにとって、注目される事はそれほど珍しい事ではない。
ただ、今のどよめきは今までのものとは全く違っていた。
「なんであの方達が一緒に……」
「王子様に……、スレイマン様まで……」
「シャルル様ぁ…………!」
それもそうだ。
色々な意味で有名人ばかり集まった集団なのだから。
この国に2つしか存在しない公爵家の令嬢であるアリアナ・サウスフィールドが、先頭で歩く。
その背後には、宮中では知らない者の居ないノーマン伯爵の孫シシリー・ノーマンと、荒れ野に咲いた一輪の雛菊と言われるアイリ・リリーシャが手を繋いで歩く。
その後に続くのは、顔を合わせただけで感動を覚えると噂の王子エリック・エンファウスト。
そして、社交界の中心人物スレイマン夫人の息子である麗しさでは右に出る者はないフリード・スレイマンだ。
その背後には、サウスフィールドの騎士服に身を包んだ侯爵令息ジェイリー・アーノルドが、護るように歩く。その柔らかな表情の中にキリッとした視線を見つけた令嬢は皆、ジェイリーに護られたいと言うようになるという。
その後ろを付いて行くのは、王都の中でも有数の商会の跡取り息子であるドラーグ・タイリウ。
学園長の息子であるマーリー・リンドベル。
あのレイノルド・ルーファウスが唯一認めたといわれる魔術師服に身を包んだアルノー・ガーディに、中等科ではかなりの人気を誇るシャルル・バーガンディが続いた。
ただ、偶然一緒に入ってきたにしては、全員の距離が近く、お互いに会話を交わしている。
その集団を見かけた生徒は皆、驚いた顔をした。
何せ、アリアナがハーレムを作ろうとしている事を知っているレイノルドでさえ、その姿を見て吹き出しそうになったのだから。
あんな勢揃いで、……本当にすっかり、ハーレムじゃないか。
それから一頻り騒いだ後、まわりできゃーきゃー言っていた生徒達が思ったのは、
「どなたがアリアナ様のお相手なの……?」
ということだった。
どうしても、アカデミーはお相手探しの側面がある以上、誰もが一瞬、その事を頭によぎらせる。
「やっぱりエリック王子じゃない?」
「う~ん、絵になるわ」
「アリアナ様……俺と結婚するんじゃなかったのか……」
なんて冗談を言う男子生徒に、近くにいたレイノルドが心の中で「そう言う君は誰なわけ?」と突っ込みをいれる。
けどそうだ。
レイノルドは、ハーレムメンバーに囲まれているアリアナを見る。
あの集団を見れば、何か大きな事を成し遂げる事も可能だろう。
アリアナが、ただ自分の好みの顔だけを揃えたわけではない事がわかる。
誰がアリアナの相手になってもおかしくない。
けど、それなら、僕はどうだろう。
外見も、才能も、地位も。
愛情の大きさも。
アイツらに負けているとは思わない。
もう、一歩も引けない、とレイノルドは決意を新たにした。
とうとうハーレムメンバー勢揃いです。