162 2日目!(2)
「うちの勝ちだろ」
「…………」
アリアナは眉を寄せた。
「これは……、うちの勝ちでしょ……?」
売り上げというだけなら、『ハローハーモニー』の方が上回っている。
ただ、服を作るには、コストがかかるのだ。
注文書を含めた売り上げ自体は『ハローハーモニー』が上回っていても、コストを引いた純利益を比べると、どう見てもマーリーの問題集の方が上回っている。
「……マーリー、あなた、売り上げ勝負って、言ったわよね?」
「……最終的に手元に残る金は、うちの方が上だ」
「…………」
不毛な睨み合いを続けた挙句、この勝負は不問になった。
ツンとした視線を向ける。
「今回は、わ・た・し・が!譲歩したのだからね?言葉に責任を持ちなさいよね」
「それ、まだ作ってない服まで含めた売り上げだろ?それもどうなんだよ」
マーリーが拗ねたような顔で、プリンに手を伸ばす。
結局、マーリーもこのちょっとした打ち上げに参加して、一緒にテーブルを囲んだ。
程なくして、店の扉がまた開いた。
みんなで視線を向けると、アルノーがその視線の多さに少し引いたところだった。
「多……」
「ふふっ」
とアリアナが笑う。
気を取り直してアルノーが話し始める。
「ああ、隣の部屋のお嬢さん。さっき先生が会議室の廊下の物はしまえってまわっててさ、廊下にトルソー2つ出してあったろ?」
「ああ!そうでした!」
がばっと立ち上がったのはアイリだ。
「勝手に預からせてもらったよ」
「ふぇぇ」
預からせて、というのは、アルノーが所属している隣の『魔術棟』の部屋に入れてくれたという意味だろう。
魔術師であるアルノーも、あの占い屋の一員だ。
「ありがとう」
アリアナがにっこりと微笑む。
「アルノー、お礼に、シュークリームでもどう?」
それは『乳製品研究会』のシュークリームなのだけれど、これがなかなか美味しかったのだ。
「ああ、こちらこそありがとう」
アルノーは、嬉しそうに席につく。
どうやら、甘いものは好きらしい。
それからすぐに、エリックとジェイリーの二人が、制服ではない王子と騎士の正装で現れた。
「おぉ~」
と歓声があがる。
「かっこいいですね~」
とアイリが満面の笑みで迎えると、シシリーが照れた様子で、
「ええ、かっこいいわ」
と目をそらす。
「迎えに来たんだけど……勢揃いだね」
実際、そこにはアリアナがハーレムに誘おうとしているメンバーが勢揃いしていた。
……こんな風に、揃ってほしいメンバーで和気あいあいとできる日が、こんなにすぐ来るなんて。
アリアナは、店を見回し、そしてそのメンバーを見回した。
なかなか強力な布陣。
このままこの国を掌握することも夢ではないんじゃないかしら。
アリアナは、自慢げな顔で立ち上がる。
「じゃあ、パーティーに行くわよ、みんな」
「おー!」
ノリのいい数人が声をあげる。
アリアナは、空を見上げた。
青く、高い空だ。
「おー!」の皆さんは、アイリ、フリード、アルノー、シャルルの4人です。