150 1日目!(1)
アカデミーの文化祭は、二日間開催される。
その文化祭も、とうとう当日を迎えていた。
まだ朝早いと言うのに、準備で学内は既に人でいっぱいだ。
「うふふふふふ」
店舗の奥、バックヤードから出てきたシシリーがほくそ笑む。
「これは大作よ!」
じゃん!
バックヤードのカーテンから登場したのはアリアナだ。
着ているのはゴシック。
黒とワインレッドのワンピース。
サイドテールに、黒いレースのリボンが結んである。
くるりと回れば、フリードが拍手を送ってくれた。
「さすがだね、アリアナ様」
「そうでしょうそうでしょう」
ドラーグの方も、拍手こそしてくれないものの、なかなか悪くない表情だ。
ピタッとポーズをつけると、
「でも、今この時は、私がメインじゃないわよね」
と言い放つ。
「そう、今日の主役はこの子!」
シシリーがカーテンをぐっとあける。
「ひゃ、ひゃあああああ」
真っ赤な顔に、必死で押さえるスカート。
赤毛をツインテールにまとめ、ガーリーな服に身を包むのは、アイリだった。
「や、ややや、やっぱり私なんかじゃ」
オロオロとカーテンの後ろへ下がろうとする。
アリアナが、その手を引き、くるりと一緒に回った。
フリードがいつものゆったりした声で、
「アイリさん、森の妖精みたいで可愛いよ」
と照れもせず言ってのける。
確かに、裾にリボンをあしらったふわふわスカートの、緑でまとめたガーリーファッションのアイリは、森で出会った小人さんのようだ。
りんごが似合いそう。
それでもしばらくモジモジしていたアイリだったけれど、みんながそれぞれの作業に戻っていった頃、隅の方で、意を決した様子でドラーグに声をかけた。
「ドラーグさん」
「どした?」
ドラーグが、一度目をぱちくりする。
「あ、あの、この衣装……変じゃないですか」
「…………」
そんな事を聞かれるとは思わなかったのか、ドラーグがふっとアイリをまじまじと見て、慌てて目を逸らす。
そして、少し不安な顔をしたアイリに、
「ああ、よく似合ってる」
と、笑顔でそう言った。
その光景を見ていたのは、アリアナとシシリーだ。
見てはいけないものを見た顔で、バッと後ろを向く。
「ア、アリアナさんアリアナさん。今の見ました?」
これ以上ないくらい小さな声だった。
「見ましたわ、シシリーさん。ドラーグったら…………」
そこで、アリアナはより一層声を落とす。
「照れてましたわ」
「…………」
二人で、まじまじと顔を見合わせると、更に声を落として、
「きゃ〜〜〜〜〜〜」
と叫んだのだった。
いよいよ、店の準備が整った。
売れなかったらどうしようとか。これまでのみんなの頑張りは報われるかしらとか。不安もないではない。
けれど。
それ以上にドキドキしている!
「じゃあ、『ハローハーモニー』開店するわよ!」
「おー!」
そんなわけで、文化祭開始です!