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15 再会はそう遠くない(2)

 真っ直ぐに、目が合う。


 困っているけれど、真っ直ぐな目。

 本当に、悪気も下心もないというんだろうか。


 どうしても、この顔は、疑いたくないと思ってしまう。

 理由はわからないけれど、大丈夫だと思ってしまう。


 もしかしたら、誰かに似てる、とか……。


 それに、少し疑問に感じた事もある。

 ジェイリーとオニオン卿の態度だ。

 花祭りでの2人は、この人に少しも嫌な顔をしなかった。


 優秀な騎士であり、優秀な護衛の二人が、怪しい人間をあんな風に見守るわけがないのだ。

 ……もしかしたら、知り合いだった?


 今日だって、こんな所に入り込めるなんて。

 余程親しい人間でないと、この本邸に入り込む事も難しいはず。


 いくら外を伝って来れるといっても、知らない人間が温室まで回って行って五体満足で見逃される程平和な場所ではない。


「…………」


 もう少し、様子を見てもいいか。

 私だって、自分の身は護れる。


「まあ、いいわ」

 一つ息を吐く。

「せっかく来たんだから、寄って行きなさいよ」


 そんなわけで、そのまま私室に通す。

 専用のサロンもあるけれど、人を隠すのには私室の方が都合が良かった。


 少年は少し面食らった顔をしつつも、

「ありがとう」

 と優しい顔で笑った。


 私室、といっても特別面白いものはない。

 専用の図書室も別にあれば、寝室も扉の向こう側だ。

 あるのは、デスクに、戸棚、サイドボード、ドレッサー、少しラフなタイプの応接セットくらい。


「座って」

 お茶を出しながら、大きなクッションのあるソファへ誘導する。

 アリアナは、出来るだけゆっくりと歩き、自分でも少年の正面に大きなクッションを抱え、座った。


「聞こうと思っていたのだけど。あなた、お名前はなんていうの?」

 にこやかに笑う。


「……ライトって呼んで欲しい」


「…………」


 おやおや?

 本名は明かせませんってか。

 ……普通にヤバい人間じゃないの。


「私は、アリアナ。アリアナ・サウスフィールドよ」


「よろしく、アリアナ」


 上辺だけの言葉。

 驚くでもなく、食いつくでもない。


 いくら隙を見せても、襲ってくるわけでもない。

 毒殺するなら今だけど、そんな様子もない。


 ストーカーか何かなら、もっと食いつき気味で話すものじゃないのかしら。

 視線も穏やか。


 もし可能性があるとすれば……。


 知り合い。

 けど、顔に見覚えはない。

 精神的な魔術道具を持ってるとしたら、かなりヤバいやつだわ。

 精神面に効果がある魔術道具は、一般的には販売されてないもの。

 専門家に依頼する事も可能だけれど、かなり高価で信頼も必要だとか……。


 色々と考えあぐねたあげく、アリアナはその少年のあまりにも穏やかな顔を見て、考えるのをやめた。


 まあ、いいか。


 悪役令嬢としては、変なのが側に居た方が、面白いわ。

基本的にみんなイケメンなので、この少年ももちろんイケメンです!

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