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140 どうにも仲がいいようで

「仲がいいのね」


「え?」


 アリアナがシシリーと一緒に会議棟に入る所で、シシリーがにっこりとアリアナに言った。


 アリアナが怪訝な顔をする。

「仲がいいって、誰と?」


「さっき、見たわ。ジェイリー様と一緒だったでしょ」


「ああ、護衛だもの」


「そんなこと言って!いい雰囲気だったじゃないの」


「そうかしら」


 ”いい雰囲気“というのは、いわゆる恋愛関係という事だろう。


 噂好きのシシリーには、そんな風に見えるのだろうか。

 一緒に居れば、お互い恋愛感情は持っていないのはわかるのだけれど。


 もちろん、主従関係ではあるし、もう数年の付き合いになるので仲はいい。

 お互い慎重に気を遣ってもいる。

 失敗は受け入れる。フォローする。

 落ち込んでいれば励ます。


 特に、ジェイリーは元々がずっと穏やかな笑顔でいる優しい人だ。


 家族かどうかと聞かれれば、家族ではないと答えるような関係だけれど。

 家族ではないじゃないかと言われれば、きっと誰よりも家族だと言い張るような関係。


 ドキドキは伴わない関係。


 かっこいいとは思うけれど。


 でも、私は、あの胸の高鳴りを知っているから、わかる。


 もっと。


 恋っていうのはもっと、幸せなものだ。

 顔を見るだけで。

 声を聞くだけで。

 抱えきれないような気持ちが溢れてしまうんだ。



 3階の廊下の先に、紺色の制服の後ろ姿が見えた。



 恋っていうのはもっと、痛いものだ。

 その瞳に自分を写したくて。

 自分以外を見て欲しくなくて。



 ペリドットの瞳がこちらを向く。



 けど。


 いざ目が合ってしまうと、心を覗かれたくなくて。

 溢れてしまう気持ちが怖くて。

 目をそらしてしまうんだ。



「アリアナ」



 だからといって。



「レイ」


 仕方なく、部屋の前で止まった。

『ハローハーモニー』の部屋の中にシシリーを入れ、アリアナは部屋を横切り、レイノルドに向き直る。

 レイノルドはまったく悪い事をしていないのに、このまま怒っているわけにもいかなかった。


 実際に、レイノルドは少し元気がないようだし。


 私のせいだったら申し訳ないもの。


「もし、」


「え?」


 レイノルドの声に反応して、アリアナが真っ直ぐにレイノルドの顔を見ると、目が合ってしまったので、気まずくなって視線を逸らす。


「何かあったなら、話を聞くから」


「…………」


 レイノルドの顔は真剣だった。

 何か心配させてしまったのかもしれない。


「僕に相談して」


 触れられそうな距離に、レイノルドが立っている。


「え……、ええ。ありがとう」


「今日、これからでいい?」


「あの……。ううん。今はもう、平気だから」


 実際、今はそれほど辛い気分でもない。

 たくさん、慰めてもらってしまったし。


「本当?」


 レイノルドがアリアナの顔を覗き込む。


「本当に!大丈夫だから!」


「…………」

 レイノルドのむ〜んとした顔が、目の前にあるのは、正直心臓に悪かった。


「本当に……。何かあったらいうから。私、シシリーを待たせているから。もう行くわね」


 踵を返し、アリアナが後ろを向いた所で、追いかけるようにレイノルドの声が届いた。


「あと、」


「え?」


 アリアナが振り向くと、レイノルドはただこっちを真っ直ぐに見ていた。


「君は公爵令嬢としての自覚がないね。護衛に気を許しすぎ」


「あ……」

 どうやら、レイノルドもさっきのジェイリーとのひとときを見ていたらしい。


「……気をつけるわ」



 だからといって!


 これは恋愛感情なんかじゃ!断じてないわ!!

レイノルドくんとしては、ジェイリーはかなり気に入らない存在なのでは。でも、ジェイリーは有能なんですよ。

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