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14 再会はそう遠くない(1)

 花祭りが終わってしまえば、あとは新学期を待つばかりだ。

 アリアナは、ノートを開く。


「私の〜花畑には〜〜〜〜♪綺麗な男がっ♪ひとりっ♪ふたりっ♪さんにんよにん♪」


 酷い鼻歌だけれど、悪役令嬢としてなら悪くない。


 明日から、新学期が始まる。


 ふいと窓の外を見ると、満月が顔を出しているのが見えた。

 ガチャリ、とバルコニーに抜ける窓から顔を出す。


 ふわりと優しい風が、アリアナの髪を掬った。

 夜風に当たりながら、今後の計画を練るとしましょうか。


 ルンルンしながら外を覗いていると、コト、と何か外から音がした。


「…………」


 靴の音?


 気のせい……?


 まさか侵入者なんて……。


 まさか、ね。


 いや、命を狙う侵入者が来るとしたら、もっと寝静まった深夜の方が都合がいいはずだ。

 夜とはいえ、通いの騎士達も帰宅前のこの時間に、騎士ばかりのこの屋敷に忍び込むメリットはない。


 デスク脇に飾ってある剣を取り、慎重にバルコニーへ出た。


 何もなければ、それでいい。


 キョロキョロと辺りを見回す。

 見えるのは、春の花が咲く庭園。


 そうそう侵入できないように、この辺りには木などもない。

 バルコニーも、他の部屋とは繋がっていない。


 けど、実は何処からも来れないわけじゃない。


 子供の頃、試してみたことがある。

 バルコニーの裏手に回って、柵のギリギリ端に登る。

 紐か何かで上の階のバルコニーに登ることができれば、上の階ならば、バルコニーが屋敷の裏側の方まで続いているから、そこから木を伝って温室の上の階の外廊下へ降りればいい。


 ドクン、ドクン、と心臓が鼓動を繰り返す。


 すっとバルコニーの端から上を覗くと、同じく上からすっと黒髪の少年が顔を出した。


「……っっっ!きっ……」


 半泣きで後ろへ退がる。

 腰が引けて、尻もちをついた。

 それに驚いた少年が、慌ててアリアナのそばまで来た。

 手で口を塞ぐと、

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 声にならない声が、アリアナの口から漏れ出る。


「し〜〜〜〜〜〜」


 口元に指をあて、少年が慌てた顔を見せた。


 それは花祭りで出会った少年だった。


「ごめん」


「なっ…………こんなところで……何して……っ」


「用事があって、公爵邸に来たんだ。様子が窺えればと思って。ここの子だっていうのは気が付いてたから。いや、言い訳にもならないよね。ごめん」


 一息にそう言うと、そっとアリアナの口から手を離す。


 用事……。

 確かに、この屋敷は、王直轄の騎士団と、公爵家の騎士団、それに騎士養成学校までもを抱えており、貴族の少年ならば、用事のある者も多い。

 けどまさか、この本邸の公爵の家族の私室まで歩いて来るものが居るとはどういうことなんだろう。


 アリアナは、訝しげな顔で、少年の顔を見上げた。

まだ、ちょっと不可解なところもあるかもしれませんが、18話まではプロローグです。のんびりお読みください。

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