136 会議室くじ引き
文化祭に出るに当たって、まずやらなくてはいけない事は、会議室の取得だ。
会議室棟には、大小たくさんの部屋が用意されている。
それはどこの所属とは決まっておらず、申し出た生徒達が自由に長期的に借りる事ができる。
慈善事業や何か部活のような活動をするグループが借りる事が多い。
そして、文化祭に参加するグループだ。
文化祭の時期は、申請数が多いので、文化祭用に数十もの部屋が準備され、どの部屋が当たるかはくじ引きで決まる。
その日の午後。
文化祭実行委員なるものが発足され、文化祭で活動を申請する団体が招集された。
団体名や活動内容が書かれた書類を提出する。
代表者だけだってのに、人数多いわね。
全校生徒は300人程度しかいないはずなのに、数十人集まっている。
50人くらいいるんじゃないかしら。
離れたところにいるレイノルドは、魔術師のマントを羽織っていた。どうやら、魔術師関連の団体に所属しているらしい。
壇上に立った実行委員長である高等科3年のハーバレスが声を張り上げる。
「では、これからこのくじを引いてもらう」
くじは、じゃらじゃらと箱に入ったダイスのようなものを一つずつ取っていくものだ。
黒板には、数字と部屋番号が書かれている。
特別作業する事があるわけじゃないから、場所にこだわりはないけど。
気になるのは、視界の端で光る眼鏡。
マーリー・リンドベルだ。
「フッフッフッフッフ」
笑い声がでかい。
「そんな声出されたら、私まで目立っちゃうじゃないの」
「君も、出店を選んだんだな」
なんでさらに声がでかくなるの!?
目立たないよう、無視をするけれど、マーリーはあまり気にしていないようだ。
「きゃー」だの「わー」だの、周りから声が上がる。
作業をする必要がある団体は、ここが鍵になるのだろう。
「ま、僕の方が売り上げるだろうけどね」
アリアナは、ツンとした顔をしてみせる。
「あら、それはどうかしら」
ふわり、と髪を揺らす。
「次、誰が引く」
声を上げた実行委員長に、ダン!と足を出したのは、マーリーだった。
「僕が行こう」
残りのくじは5つ。
小さな部屋も残っているが、まだ、一番大きな部屋が残っている。
コロコロと音をさせながら、マーリーが一つ、ダイスを取った。
『14』という数字が入っている。
小さい部屋ではないが、5人が座れるソファに、テーブル、戸棚が一つついており、なかなか快適なはずだった。
アリアナが、フフンという顔をする。
「一番大きな部屋じゃなかったわねぇ」
マーリーが少し悔しそうな顔をした。
もしかして、この流れ、私の方に来てるんじゃないかしら。
1番に割り振られているバス・トイレ・執事付きのスイートルームは私がいただくわ!
コロコロと音がする中、アリアナはひとつ、ダイスを手に取る。
「…………」
白いダイスに書かれている数字は、『15』。
マーリーがその瞬間、ドヤ顔を作った。
「残念だったね」
「あなたと同じサイズの部屋よ。どっちも勝ってないわ」
悔し紛れにそう言いながら、ふと気付いてしまう。
マーリーの手にしているダイスは14。アリアナは15。
慌てて黒板を見上げると案の定。
マーリーの隣の部屋が、アリアナ達が借りた会議室だった。
アリアナは、恨めしげに手の中の小さなダイスを眺めた。
さて、マーリーは何を売るでしょうか?