133 出し物を決めましょう(1)
2日の休暇を取り、アカデミーは再開された。
休んでいた生徒達も、徐々に戻って来て、また元の姿に戻りつつあった。
魔術師団の中から情報を流していた魔術師も捕まり、アカデミーに張っていた魔法陣も張り直された。
侵入者は居なくなり、アカデミー内は文化祭の雰囲気が高まっていた。
昼食時、カフェの外の席で、アリアナ、アイリ、ドラーグの3人は、文化祭の相談をしていた。
カフェらしいオシャレなサラダとオシャレなパスタでドラーグの腹が満たされるのかと少し心配になったけれど、カフェごはんはそれはそれで研究の余地があり楽しいらしい。
アイリが、大事な事を言う時の真剣な顔で、
「私、考えたんですけど」
なんて言い出す。
ずっと何か考えていたみたいだものね。
真剣な、空気。
アイリが口を開く。
「団体名『アリアナ様ランド』はどうでしょうか!?」
「…………」
団体名?
何日もかけて考えていた事がそれ!?
「どんな国よ!!」
ドラーグまでこっそり笑ってしまっている。
「アリアナ様を讃える団体ですよ」
そう言い放つアイリは、若干息が荒い。
正直なところアイリとしては、文化祭後もどさくさ紛れにこの団体を存続し、アリアナを見守る会を続けていきたいと思っていた。
アカデミーには、放課後、慈善事業や色々な活動を行う団体がいくつも存在している。
その中にアリアナを見守る会があってもいいじゃないかというわけだ。
けれど、アリアナはそれにNGを出した。
「ひとまず売り物から考えましょう」
そう。
活動内容によって団体名を変えてもいいのだから。
「ドラーグは?」
「俺は……」
ふむ……と悩む顔をしてドラーグが言う。
「酒、かな」
「『酒、かな』じゃないわよ。ダメに決まってるでしょ。あなたは確かにお酒が似合うけど」
確かにドラーグの外見はお酒が似合う。
けれど、そんな問題ではない。
この国にはお酒の年齢制限こそないけれど、貴族の令嬢令息を酔わせるような事をすれば流石にお咎め無しとはならない。
悪くすればアカデミーに通えなくなる。
アカデミーに通えなくなるという事は、貴族社会からの抹殺を意味する。
そういった周りの視線があるからこそ、法律もないのだろう。
ドラーグがこんな事を言い出した理由もわかっている。
今年はこの国でも、北の方にあるワイナリーの調子がいいそうなのだ。
さぞこんなお祭りで売れるものを売っておきたいだろう。
けど、ダメだ。
「健全なものにしましょう」
「はいはい」
「私は、ケーキがいいと思います!」
ぐっと手に力を入れたのは、アイリだ。
「いいわね。得意なの?」
「…………」
その沈黙を見るに、アイリもどうやらお菓子は食べる専門のようだ。
アイリがおずおずと口を開く。
「料理ならそこそこできるんですけど、お菓子のような嗜好品の材料はなかなかいただけなくて」
「私も、クッキーとか、簡単なものしか作れないわ」
「う〜ん」と悩み始めた3人だった。
こういうときこそ、前世の記憶が役立つというものよ。
とはいえ、機械のようなものには詳しくないし、文化祭といえば焼きそば……わたあめ……どれもゼロから作るとなったら大変なことになるだろう。
わたあめの機械はそのうちどこかで提言するとして。
「じゃあこういうのはどうかな」
ふと、別のところから声がして、アリアナはそちらの方を向いた。
さらにメンバーを追加して、文化祭エピソードを始めたいと思います。