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131 臨戦態勢(2)

 ジェイリーがこんなに優秀だなんて、聞いてないわ……!


 脇から3人の男が、斧や槍を持って掛かってくる。


 これならいける……!


 アリアナは足を踏み締める。

 アリアナまで辿り着く前に、騎士団が男2人を薙ぎ倒した。


 騎士団を踏みつけ、乗り越えて来たのは槍使いだった。


 エリックとアリアナがダッと駆け出す。

 アリアナが懐に飛び込み、槍先を逸らすと、エリックがその槍を弾き飛ばした。


 踏み込んだ勢いで、剣を突き立てた。

 剣は、男の肩を刺す。


 そこで、戦意を喪失してくれてよかった。


 騎士団が飛びかかり、男の対処をしてくれた。


「ハァ……ハァ……」


 自分の息の荒さを感じる。


 返り血が、制服についた。


 手が、震える。


 建物の方から、

「確保!」

 という声が聞こえ、全てが終わった事を知らせた。


 よかった。

 どれだけ血を浴びても護るつもりでいたけど……やっぱりこの力の強さでは、想像通りにはいかないわね。


 剣を、鞘に収めた。


 周りのざわつきが聞こえる。

 一人じゃないって、こういう事なんだ……。


 勝った。


 けど、足が動かない。


 本物の人を刺す衝撃っていうのは、こんなに重いものなのね。


 たくさんの人の声。

 ザクザクと歩く足音。

 ガシャガシャとした金属音。

 誰かが誰かを呼ぶ声。


 立ち尽くしていると、ふっと、支えるようにアリアナの背中に手が置かれた。


 現実に引き戻されるように、そちらを向くと、レイノルドの顔が見えた。


 笑おうとして、馬鹿みたいね。

 泣きそうな目をしているくせに。


 レイノルドが、アリアナの顔についた泥を袖で拭ってくれる。


 ああ、よかった。

 あなたはなんともないのね。


 ここに残る事にしてよかった。

 あなたを守る事が出来てよかった。


 アリアナの顔が、くしゃっと歪む。


 嬉しいわけでも悲しいわけでもないのに、勝手に涙が溢れ出る。


 助けに来てくれてよかった。

 助けに来てくれたのが、レイでよかった。


 小さな頃から、その優しさが悲しかった。

 かっこよすぎて苦しかった。


 けど、やっぱりレイでよかった。


 その涙に少したじろいだレイノルドが、そのまま袖で涙も拭う。


 そこへアリアナの頭を撫でたのは、エリックだった。


「アリアナ。よくやった」


 偉そうだけれど、優しい声に、笑顔になる。


「私とあなた、二人で勝ったのよ」

「ああ」

 エリックが、にっと笑顔を作った。

「俺達の勝利だ」

 エリックがアリアナを抱きしめる。

 むっとしたレイノルドがアリアナを引き戻した。


「…………」


 エリックがレイノルドを睨み返す。


「いいじゃん。ちょっとくらい」


「エリックは友達だから、あまり潔癖にならなくて大丈夫よ」

 アリアナが苦笑いをすると、

「大丈夫とかじゃないでしょ」

 レイノルドが呆れた顔をした。


「じゃあこっち」

 エリックがアリアナの右手を取る。

 レイノルドがムッとした顔のまま、アリアナの左手を取った。

「わかったよ」


 アリアナが「ふふっ」と笑う。


 右側にはエリックが、左側にはレイノルドが並ぶ。


 小さな頃みたいね。


 小さな頃は、こうやって並んで絵本を読んでもらったりしたっけ。


「行きましょ、二人とも」


 小さな頃よりもずっと背の高くなった二人の手を引く。


 三人は並んで歩いた。

 アリアナは時々、その両手が繋がっているのを確認しながら、二人の顔と空を見上げた。

誘拐エピソードはここで終わりです。

幼馴染み三人組が仲良しなのもいいよね!

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