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128 誘拐事件!(6)

 アリアナの目の前にすとんと飛び降りる。

 なんて軽そうに飛び降りるのか、こいつは。


「大丈夫?」


 視線が合う。


 ペリドットの瞳。

 それは間違いなく、レイノルドだった。


「え……どうし……て」


 だって魔術師がこんなところまで来るはずない。

 基本的に、戦う人じゃないんだから。


 だって……。


 大きな声を出さないよう、レイノルドが人差し指を唇に当てた。


 幻を見ている様だった。

 ぼんやりと、自分とは関係のない、電車の窓の外を見る気分と似ていた。


 レイノルドは懐からペンを取り出し、地面に円を描いていく。


 ……魔法陣だ。


 スラスラと。

 何も見ずに描けるなんて。


 けれど、土に直接描くなんて、それほど複雑な陣は描けないはずだ。


 ぼんやりしていると、中心から外側に向かって描かれていった魔法陣は、最後の線を書き入れられたようだった。

 最後の線を書き入れたところで、魔法陣が淡く光る。

 レイノルドは躊躇なく魔法陣の中心へ足を踏み入れた。


 レイノルドが、アリアナに手を差し伸べる。


「……え?」


 アリアナがキョトンとすると、レイノルドが少しおかしそうな顔で笑う。


「ほら、ずっとここに居るつもり?」


「…………」


 おずおずと、レイノルドの手に掴まると、アリアナはその手に引き寄せられた。

 ぼふっと頬に押し付けられたのは、レイノルドのマントだった。


「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


 こんなこと!!


 こんなことされたら……!!


 回された腕に力が入る。


 離れられそうもなくて、きっとこれは抜け出すために必要だからこうなっているだけなのに。

 ……抱きしめられてるんじゃないかって、勘違いしちゃうじゃない。


 顔は上げられない。

 上げられないけれど。


 その温もりがどうしても、アリアナにはかけがえのないものに思えた。


 ぎゅっと、レイノルドに掴まり、目をぎゅっと瞑った。


 ……あまり意識したことはなかったけれど、こうして並ぶと、私より背が高い。

 小さい頃は私よりちっちゃかったくせに。


 レイノルドのさっぱりとした匂いに、つい安心する。


「…………」


 …………まだかしら。


 ふと、目を開けると、レイノルドは左腕でアリアナを抱えたまま、内ポケットから1枚の紙を取り出した。


 ?????


 今のぎゅーは?????


 何のためのぎゅーなの……?????


 レイノルドが取り出した小さな固い紙には、魔法陣が書いてあった。

 小さいけれど、精巧な魔法陣だ。


 足元に置くと、その小さな紙を足の裏で抑える。


 もう一度、レイノルドはアリアナを抱える様に抱きしめると、静かな声で唱える。


「トリガー設置(セット)


 ……!!


 耳!!


 耳元で言わないで!!!!


 魔術師って、呪文みたいなもの唱えるのね!!知らなかったわ!!!!


 アリアナの混乱と同時に、魔法陣の端から炎がばしばしと線を描く。


「…………!?」


 これも、魔術なの……?


 足が浮く様な感覚がして、アリアナは今まで以上にレイノルドにしっかりと掴まった。

レイノルドくんも助けられて嬉しかったんだと思います。

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